シーズン終了後、去就について明言していない広島黒田博樹投手(40)が11月30日、悩める胸中を吐露した。都内のホテルで、かつて選手会事務局長を務めた故松原徹氏を「偲ぶ会」に出席後、報道陣の前で現在の心境を語った。大リーグ球団の巨額なオファーを蹴って、広島復帰を決めてから1年。現役続行か、引退か-。再び岐路に立った黒田が、2つの間で揺れている。

 自分の気持ちを自分でも整理できていないようだ。現役続行か、引退か。間で揺れる黒田は、悩める胸の内を報道陣の前でせきを切ったように語り始めた。

 黒田 今年は野球人生でも最高のモチベーションで入った。それなりの覚悟と高いモチベーションで帰ってきた。今まで以上にやってきて、これを超えるモチベーションを探すのは難しい。

 昨年12月、8年ぶり古巣復帰を決めた。マツダスタジアムの年間指定席が初の完売。主催試合の観客動員数は球団初の200万人を突破した。広島だけでなく、日本の野球ファンが黒田に沸いた。2度の抹消がありながら11勝を挙げた。成績だけでなく、野球に取り組む姿勢で若手の手本となり、マウンド上での戦う姿勢でファンを熱くした。

 だからこそ「(シーズン最終戦後は)1年が終わって燃え尽きたという思いがあった。すぐに答えを出すのが怖かった」。10月15日に家族が住むロサンゼルスへ渡米した。1年の疲れを取りながら、NBAを観戦。コートでプレーする選手と自分の姿を重ね、来季のことも考えていた。

 黒田 来年やるにしても心の部分が大事になる。体を動かすのも気持ち。今年はなりふり構わぬ気持ちでマウンドに立った。プレッシャーもモチベーションもあった。来年同じ気持ちで立てるのか。(燃えるものを)探している。(今年の思いは)超えないと。

 男気(おとこぎ)で日本に帰ってきた右腕が、来季求めるものは気持ち。11月27日のバッテリー会では「戦力になれるか」をポイントに挙げたが、この日は違った。メトロノームのように、心は引退と現役続行を行ったり来たり。男気が再び奮い立つことが、現役続行の条件となる。このまま終わりでは、あまりにも寂しすぎる。【前原淳】

<今季の黒田アラカルト>

 ◆3月29日ヤクルト戦(マツダスタジアム)7回を5安打無失点の好投で、2740日ぶりのNPB白星。「広島のマウンドは最高でした」。

 ◆5月3日 右腓骨(ひこつ)筋腱(けん)周囲炎(右足首の炎症)と判明し、登録抹消。

 ◆同15日DeNA戦(マツダスタジアム)復帰登板も5回降板(勝敗なし)。

 ◆同29日オリックス戦(京セラドーム大阪)カード初勝利で国内11球団から白星となり、日本人最多の日米計40球団から勝利。

 ◆7月8日 右足首の炎症に加え右肩にも炎症が見つかり、再び登録抹消。

 ◆同18日球宴第2戦(マツダスタジアム)ファン投票で選出されて先発し、2回を無失点。

 ◆同28日ヤクルト戦(神宮)1軍復帰し、7回7安打1失点で7勝目。

 ◆8月11日ヤクルト戦(マツダスタジアム)日米通算500試合登板も、5回5失点で黒星。

 ◆9月28日DeNA戦(横浜)10勝目を挙げ、日米6年連続2桁勝利。40代での2桁勝利は球団初。

 ◆10月4日阪神戦(甲子園)40代では2リーグ分立後最多タイの11勝目を挙げ、シーズン終了。