マー君になってくれ! 阪神藤浪晋太郎投手(21)が9日、大阪市内で金本監督とファイテン社主催のトークショーに参加した。掛け合いの冒頭、金本知憲監督(47)から突然「21勝0敗」を指令されて苦笑い。13年に24勝0敗で楽天を初Vに導いたヤンキース田中ばりのスーパーな活躍を期待され、「負け数を減らしていきたい」と力を込めた。

 いきなりのジャブに、タジタジだ。約600人の観客は拍手喝采。藤浪はもう笑うしかなかった。

 金本監督 さっき21勝すると宣言していたので。21勝0敗とね。僕は20でいいと言ったんですけどね。

 トークショーの冒頭、今年初対面の指揮官から突然、尋常ではない指令を受けた。もちろん打ち合わせはなし。「いや…、できたらいいですね。0敗、すごいですね…」。藤浪は力ない声量で笑わせた後、キリリと表情を引き締めた。

 藤浪 勝率にこだわりはある。負けないことが大事。負けない努力はできる。

 昨年12月のラジオ番組内で19勝を指令されていたが、まさかの2勝上積み。藤浪は「知らないうちに増えていますね」と苦笑いした。とはいえ、実現不可能とは言い切れない。13年には楽天田中(現ヤンキース)が無傷の24勝でチームを初Vに導いている。指揮官はトークショー後、高いハードルの意図を説明した。

 金本監督 冗談半分、本気半分。マー君も24勝0敗をやっているんだから。それを目指すくらい、準備と練習と精神と。そういう気持ちを持ってやってやろうやないかとね。

 藤浪からすれば、0敗は「究極」だという。昨季の得点圏被打率1割9分9厘は規定投球回到達者の中で巨人菅野に次いでリーグ2位。「相手のチャンスをつぶせば、こっちに流れが来るぐらいの気持ちでやっています」。奪三振能力にたけ、勝負勘に優れたスタイルがあれば、田中の背中を追うことは十分可能だ。

 藤浪 0敗は努力できることではある。(現実的に)0敗はまず無理だと思いますけど、自分に負けがつくとチームも確実に負けているということ。負け数が0に近い方がいい。

 プロ野球の歴史を振り返れば、勝率10割の規定投球回到達者は過去4人。20勝以上では田中しかいない。楽天時代の田中とは1年目の13年6月16日に敵地で投げ合い、完封した先輩に5回途中3失点で完敗。「ランナーを出してからが全然違う。計算してアウトを取っている」と驚いた過去がある。あれから2年と7カ月。マー君の域まで成長できると、指揮官は信じている。【佐井陽介】

 ◆シーズン無敗 規定投球回以上でシーズン無敗の投手は、13年に24勝の田中(楽天)まで過去4人。阪神では1リーグ時代の36年秋に景浦(6勝)、37年秋に御園生(11勝)が記録している。セ・リーグで記録すると、阪神に限らず史上初となる。セのシーズン最高勝率は66年堀内(巨人)の8割8分9厘(16勝2敗)。