「持ってる」黄金ルーキーが、最後のひと振りで魅せた。楽天ドラフト1位のオコエ瑠偉外野手(18=関東第一)が7日、初の紅白戦に「2番・中堅」でスタメン出場。3打席無安打で迎えた4打席目に左中間への2点適時三塁打を放ち、持ち味の走力を首脳陣にアピールした。安楽相手の初打席は見逃しの3球三振に倒れたが、打席ごとに修正し、最終打席の一打につなげた。

 見逃しの3球三振で始まった「オコエ劇場」には、やはりクライマックスが待っていた。無安打で迎えた7回の第4打席。無死一、二塁でカウントは1-0。集中力を極限に高めたオコエが、高堀の内寄り131キロ直球をたたきつぶした。ライナー性の打球は左中間を転々。ためらいなく二塁を蹴った。「自分の中では右中間、左中間を抜けたらスリーベースコース」。背筋の伸びたランニングフォームと、大きなストライド。勢いはさらに増し、スライディングで三塁へ。「持ち味のベースランニングを見せられた」。節目のプロ初実戦、初安打は、自身の魅力を凝縮した三塁打だった。

 やられっぱなしでは終わらなかった。梨田監督は「持ってますね。あの場面で打席が回って、打って、足も見せるんだから」とうなった。中飛に打ち取られた第3打席は6回先頭。本来なら最終打席となったはずが、後続の連打でさらなるチャンスが巡ってきた。「アピールしたかった。どんな形でもいいから、もう1回打席に立ちたかった」。緊張から「あっという間にやられた」と振り返る第1打席とは集中力が違った。

 三塁への到達タイムは11秒51(本紙計測)。昨夏甲子園の高岡商戦でマークした数字は10秒75だったと聞き「セカンドベースを回る時に、歩幅を合わせにいってしまった。もっと技術を上げたい」と反省したが、視察したオリックス曽我部スコアラーはトップクラスの走力と評した。「ストライドが広く、円を描くような滑らかな走塁。ふと新庄の姿を思い出した」。例えに挙がった対象は、偶然にも小学生時代から憧れた人だった。

 木製バットへの対応などを模索するなかでも、一定の結果を出した。実戦を経験し、持ち前の向上心はさらに強まるばかり。「今の自分の力は出せました。ただ、打撃だけじゃなく守備、走塁、全部がまだ先輩とは比べられないレベル。もっと見て学びたいです」。この一打を、さらなる成長へつなげる。【松本岳志】