捕手争い、事件です! 広島の日南キャンプでチームの実戦1号を放ったのは、ドラフト4位船越涼太捕手(22=王子)だった。8日のシート打撃で九里の直球を左中間へ運んだ。キャンプインから取り組む癖の修正が効果を発揮し、崖っぷちから生還? ええ1号の「赤いフナコシ」が正捕手争いに食い込む。

 まるで2時間ドラマのラストシーンだ。船越は打席で「事件」を鮮やかに解決した。午後のシート打撃で九里と対戦。死球後の4球目を左中間スタンドまで運んだ。今キャンプ実戦第1号は“脇役”の船越だった。捕手争いに波風を立たせる一振り。左手をテープでガチガチに巻き、プロで最初の結果を出した。

 「やっていることが間違っていなかったんだという自信にはなります。実績も何もない。僕みたいな選手は、とにかく結果を出すしかないんです」

 事件解決のストーリーは、1週間前から始まっていた。キャンプインと同時に石井打撃コーチの指導を受けていた。悪癖を導いていた犯人は、右腕。真っすぐに出せず、下からすくい上げるような腕の振りだった。すぐに軌道の修正に着手。壁に向かって正拳突きしたり、バットで8の字のスイングをしたりと、あの手この手を尽くしていた。

 俳優船越英一郎が演じる火災調査官なら走りだすであろう、ピン! と来るイメージをつかんだ。「振り終わった後に右肩が上がっているイメージ。そうすれば自然に上から出る」。徐々に修正の効果が出た。石井コーチも「最初はどんなものかと思ったけど、修正する能力、のみ込みが早い」と驚いた。課題は多いが、実戦向きな即戦力の力を証明した。

 赤い指揮官、緒方監督もうなる。先日のシート打撃でも左中間二塁打を放っており「びっくりするような打撃を見せてくれる。結果を見せられると、対外試合を含めて行ってもらおう、となる。あれだけシュアな打撃を見せられるとね」。使ってみたくなる存在になっている。

 正捕手争いは石原、会沢が飛び抜け、さらに磯村が続き、現時点で船越はその次だ。コートもはためく崖の上の逆風にも「まずは(2次キャンプの)沖縄に行きたい。そして開幕1軍がベストです」。冷静に、虎視眈々(たんたん)と。屈指のイケメンが捕手争いにサスペンスを起こす。【池本泰尚】

<船越涼太(ふなこし・りょうた)アラカルト>

 ◆プロフィル 1993年(平5)11月26日、千葉県出身。市柏で高校通算20本塁打。社会人の王子に進み、ドラフト4位で入団。背番号54。推定年俸800万円。

 ◆サイズ 身長178センチ、体重83キロ。遠投115メートル。

 ◆遅咲き 王子入社後、内野手から捕手に転向。二塁送球1・8秒の強肩。打てる捕手が目標で、フルスイングを心がける。

 ◆丸に驚き 内角のさばきに難点があり、丸の打撃フォームに驚き。「石井コーチが言っていることが、丸さんを見ていると分かる」と目を丸くした。

 ◆匂いフェチ 入寮に際して柔軟剤の「メキシコダウニー」を持参。匂いで人を判別出来るほどの嗅覚の持ち主。