日本一のインテリ軍団、よく見てください! 阪神の沖縄・宜野座キャンプで17日、東京6大学リーグの東京大学野球部が見学に訪れた。サプライズゲストは藤浪晋太郎投手(21)、藤川球児投手(35)ら投手陣の練習を勉学意欲も旺盛に見て回った。金本知憲監督(47)率いる超変革キャンプが「最高学府」の野球部プレーヤーに刺激を与えた。

 宜野座キャンプのブルペン横に設置された関係者席に、見慣れない制服を着た男たちがいた。「他球団の007か?」「爆買いツアーの外国人客か?」。ざわつく周囲の声をよそに、投球練習する藤浪にスマートフォンを向け、動画撮影にいそしむ謎の集団。首にかかるゲスト証には「東京大学」と記されていた。

 東大野球部の阪神キャンプ視察はもちろん初の出来事。超エリート集団の来訪を伝え聞いた金本監督も「来ていたの? 桑田(真澄)さんが教えていたんだよね」と関心を示した。思ってもみない熱視線を浴びた藤浪は「好きにどうぞという感じですけど。参考になる部分はそんなに多くないと思いますが…」と苦笑いしながら歓迎した。東大部員たちはいたって真面目。2年生の田宮克真学生コーチは「すごいなと思った。僕たちの年代で一番の投手」と目を凝らしていた。同世代の藤浪だけでなく、藤川や岩田の一挙手一投足をじっくりと観察。生きた“教授”から学んだことを充実の表情で振り返った。

 「何か少しでもプロから学ぶものがあればと思って。午前中のフィールディング練習も、捕ってからの速さが全然違う。送球も正確。藤浪さん、岩田さんがすごかった」

 昨年の春季リーグで連敗を94でストップ。秋にも1勝を挙げるなど、雌伏の時代から脱しようと必死な東大野球部は「最下位を脱出するテーマを掲げている。レベルが高いですが、少しでもそこに近づけるように」と力説する。那覇合宿の休日に有志が訪問先として、数多くあるプロ野球のキャンプ地から阪神の宜野座を選んだ。「超変革」をスローガンに掲げ、金本監督の下で変貌を遂げようとする伝統球団の姿勢がシンクロしたのかもしれない。

 東大生の「教科書」になるかもしれない藤浪はブルペンで39球を投じた。打席に打者を立たせて、変化球もチェック。特に、これまでも投げていたサークルチェンジアップ(親指と人さし指で輪を作るようにして握るチェンジアップ)を試し、低めに沈む軌道を確かめていた。「いいものもあれば、悪いものもある。これからしっかりやっていこうかと思います」。東大野球部のお手本としても、レベルアップに力が入る。【梶本長之】

 ◆東大野球部 1919年(大8)創部。25年、先行の早大や慶大などに合流し「東京6大学野球連盟」が発足した。リーグ最高成績は46年春の2位。15年春の法大戦に勝ち連敗を「94」でストップ。同年秋の法大戦でも先発の宮台康平投手(当時2年=湘南)が6回2失点と好投し1勝を挙げた。昨年秋まで36季連続最下位で、勝ち点は02年秋の立大戦が最後。13年には、巨人OBの桑田真澄氏(野球評論家)が特別コーチ。プロ野球には、新治伸治、井手峻、小林至、遠藤良平、松家卓弘と5人を輩出。主なOBにNHK「ニュースウオッチ9」元キャスターの大越健介氏がいる。