起死回生の1発でチームを救った。DeNA筒香嘉智外野手(24)が、阪神戦で1点を追う9回、3号の同点ソロをマークし、下園辰哉外野手(31)のサヨナラ打につなげた。8回まで好投を続けていた阪神能見の完封を目前で防ぎ、アレックス・ラミレス監督(41)に初のサヨナラ勝ちを贈った。前夜3月31日の巨人戦でも一時同点の3ランを放っており、2夜連続の土壇場アーチとなった。

 これぞ4番の仕事だ。9回先頭で打席に立った筒香は1球で仕留めた。高めに甘く入った直球を強振、打球は左中間スタンドへ。1対1の同点。完封負けムードを一瞬でひっくり返した。後続が2死一、二塁とつないで投手交代。最後は下園が左中間へサヨナラ安打を放って、劇的な逆転サヨナラ勝ちになった。

 「井納さんが最少失点で抑えてくれてた。野手は1点も取れず、何とか同点と思って打ちました」。先発の井納が8回4安打1失点と粘った。降板したが、思いに応えたかった。阪神能見は得意だったはずだった。通算25打数10安打の打率4割、昨季は9打数7安打と打ちまくった。それが8回まではチームで3安打。「相性なんて年が変わったら関係ない」と言いながら、値千金弾を残した。

 主将として、Aクラスへの強い思いがある。打ち付ける雨に負けず、2万5000人を超えるファンが横浜スタジアムに集まってくれた。「これだけの方が足を運んでくれる、最高のスタジアムになった。ファンの皆さんのためにも、自分たちのためにも、ホームで開幕戦を迎えたい」。東日本大震災で開幕が遅れた11年を除き、本拠地での開幕は07年が最後。筒香はその感動をまだ、経験していない。

 今季も開幕戦白星スタートを切ったが、遠く離れたマツダスタジアムだった。前夜、本拠地開幕カードの巨人戦は延長戦で敗れた。でも7回に同点3ランを打った時、スタンドが大歓声で沸いたのがうれしかった。負けても、ラミレス監督は常にこう言う。「今日はまた新しい1日だ」。気持ちの切り替えは、スムーズだった。

 指揮官にとってもサヨナラ勝ちは就任して初めて味わう喜びだった。「本当に信じられないゲームだった。ツツゴウはNO・1! 4番として必要な仕事をしてくれた」。監督が思わずベンチを飛び出してしまうほどの、喜び大きな1勝。「勝つことはすごくいいことですね」と言った筒香の口角も、穏やかに上がっていた。【鎌田良美】

 ▼筒香が9回に同点アーチ。今季の1号は広島戦、2号は巨人戦。DeNAで開幕から3カード連続本塁打は13年ブランコ(4カード連続)以来だが、日本人選手では79年福嶋以来、チーム37年ぶりだ。前日の2号も同点弾で、筒香が2試合続けて肩書付きの殊勲本塁打を放ったのは14年9月24日同点→25日勝ち越し、15年5月20日先制→21日逆転に次いで3度目になる。