この活躍は、新人の枠を超えている。阪神ドラフト1位高山俊外野手(22=明大)が「伝統の一戦」デビュー戦で4安打した。開幕10戦で早くも2度目となる1試合4安打。左腕の巨人ポレダを1回、3回と痛打し、6回にはトドメの2点適時打を放った。観戦に訪れた巨人長嶋茂雄終身名誉監督も一発で名前を覚えるヒットショー。いいですよ~。

 「伝統の一戦」で輝かしい第1歩をしるした。高山が、昨季チームが苦手としたポレダをいとも簡単に攻略し、打線に火を付けた。

 「ピッチャーを見たときに球が速いと思って、その準備はしてました」

 1回と3回にポレダを撃ち、6回にもダメ押しの2点適時打。これで、高山が打点を挙げた試合は4勝1分けと無敗だ。9回にも遊撃内野安打で4安打。打率を3割3分3厘まで上げた。金本監督も「本当に新人ですかねえ」と笑顔で「状況判断、落ち着き、素晴らしい」と賛辞を並べた。

 初対戦の投手相手にも結果を残す。まさに天才の表現が似合う。中学時代に所属した船橋中央リトルシニアの恩師、掛川勉GMは「中学、高校は天才肌だった。卒団後も、シニアに来てくれてましたが、指導してくれよというと、僕、できないですと言っていた。バッとか、シュッとか、そういう風にしか言えないもんなって言ったら笑ってました」と証言する。

 それでも明大の4年になると教えられるようになり「分かりやすく中学生に言えるようになった」という。高山が明確に自身の打撃について語れるようになったのは「考える」ことを始めたからだと自覚する。

 「考えるようになったから、言葉にできるようになりました。バッティングについてそこまで考えてなかったんで」

 天性の打撃センスに「思考」をプラス。こうしてプロでも活躍出来る安打製造機が完成した。

 「初めてです。テレビで見たことはありますけど。雰囲気も違いましたし、そういう雰囲気にのまれることなく自分のプレーが出来たのはすごく良かったです」。初めての伝統の一戦、初めての東京ドームでいきなりのヒーローインタビューに呼ばれた。最後は高らかな声でこう締めくくった。「明日も絶対勝ちます!」。これが超変革を象徴する黄金ルーキーだ。【梶本長之】

 ▼高山が今季2度目の1試合4安打。阪神の新人で巨人戦4安打は、98年9月18日(甲子園)坪井以来、ドラフト制後(66年以降)18年ぶり2人目。坪井の4安打は巨人戦出場24試合目で、初出場では高山が初。巨人戦のデビュー戦では、条件を3安打以上に広げても、阪神新人では00年9月13日の上坂しかいなかった。

 ▼高山は4安打中、ポレダから3安打。左腕投手から初のマルチ安打となった。前日までは左から計3安打で、中日大野、DeNA福地、石田から各1安打だった。