プロ11年目で、ついに首位打者に躍り出た。ロッテ細谷圭内野手(28)はチャンスで冷静だった。2-3の5回1死満塁。「最低でも外野フライを」とゾーンを高めに定めた。そこに、ソフトバンク摂津の136キロが高く来た。待ってましたとばかり振り抜くと、打球はぐんぐん伸びる。必死に背走する中堅柳田の頭上を越えた。この日3安打目が、逆転の2点適時二塁打に。二塁ベースに仁王立ちして両拳を握りしめた。

 勢いは止まらない。6回にも適時二塁打を放ち、9回にはダメ押しの2点左前打。自身初5安打で計5打点を荒稼ぎした。打率は4割3分2厘に急上昇。西武中村を抜きリーグトップに浮上した。“首位打者”の呼び声に「まだ4月ですから。まだまだ、そんな」と言いながら、頬を緩めた。

 「欲張らず、1打席1打席集中してやろうと思います」と強調するのは、心掛けがあるからだ。帽子のつばの裏に英語で3つの言葉を書き込んでいる。(1)PLAY HARD(一生懸命)(2)CONCENTRATION(集中)(3)ENJOY GAME(楽しむ)。試合中も、イニング間に見返している。今年2月、石垣キャンプを終え那覇に移動した時、巨人クルーズと食事に出かけた。「3つの言葉を書き込め。試合前は鏡に向かって『スリーヒット』と言うんだ」。元同僚の助言を愚直に守っている。そのクルーズが抜けた内野で、定位置をつかんだ。

 打線が今季最多18安打17得点で、単独首位に立った。伊東監督は「最後は大味になったけど、打線が活発につながった」と目を細めた。その一角に、覚醒した細谷がいる。【古川真弥】