中日が今季初のサヨナラ勝ちを収めた。ヒーローは8番打者の杉山だ。1点を追う9回1死満塁。谷繁監督から耳打ちされた。

 谷繁監督 お前が捕手だったら内角はあるか?

 杉山 ありません。

 谷繁監督 なら外角を思い切り振り切ってこい。

 マテオの外角への高速スライダーを打つ。そう決めて打席に入った。初球、右腕がサインに首を振った。とっさに狙いを直球に。真ん中の151キロを振ると、白球は前進守備の中堅の頭上をゆうに越えた。

 「感性を大事に。プラス、データ」。杉山の捕手としての身上。名捕手だった谷繁監督からも言われてきたことが打撃に生かされた。師弟で通じ合った“捕手力”が劇的なプロ初サヨナラ打になった。

 「不利な状況から逆転したかった」。勝っても、もやもやしていた。5回。1死一塁で足の速くない梅野に盗塁を許した。「正直、盗塁はないと決めつけていた。そこから3点を取られた」と猛省。谷繁監督も「2度とないよう」と叱った。

 昨年1軍デビューした4年目。今季は桂と完全な併用で、正捕手に挑戦中。「どの野球選手から見ても自分はまだまだだと思う」。謙虚な言葉と裏腹に、目はギラついていた。【柏原誠】

 ◆杉山翔大(すぎやま・しょうた)1991年(平3)2月10日、千葉県旭市生まれ。東総工から早大。12年ドラフト4位で中日入り。3年目の昨年5月に1軍デビュー。昨季はチーム捕手最多の47試合に先発(出場は64試合)し、同最高の勝率5割2分2厘を残し、打っては3本塁打、打率1割8分3厘。173センチ、88キロ。右投げ右打ち。