ソフトバンク柳田悠岐外野手(27)が、日本タイ記録で今季初の首位を奪取した。1ゲーム差の2位で迎えたロッテとの首位攻防戦。同点の8回1死満塁で、決勝の押し出し四球を選んだ。開幕から18試合連続四球となり、70年に巨人王貞治が作ったプロ野球記録に並んだ。チームは借金3と沈んだところから7連勝。ロッテを勝率で上回り、単独首位に浮上した。

 日本タイ記録の四球は、チームにも価値あるものになった。柳田の第4打席は、同点に追いつかれた直後の8回1死満塁で巡ってきた。カウント3-1から代わったばかりのロッテ左腕松永の外角低めをしっかりと見極めた。「どんな形でも点が入ればいいと思っていた。入ったのでよかった。バンデン(ハーク)も頑張っていたので」。チームの7連勝、今季初の首位奪取を決める決勝点。工藤監督も「非常に大きかった」と大喜びした。

 開幕から18試合連続四球で、王球団会長に並んだ。「全然並んでないです。(記録は)何にも考えていないです」。柳田は謙遜するように言ったが、46年ぶりのタイ記録は強打者として成長した証しでもある。昨年トリプルスリーを達成した怪物を抑えようと、パ各球団が厳しい内角攻めを続け、今季の四球は既に25個を数える。柳田は常に「自分のスイングをするだけ」と話す。それはボール球に手を出すと自分の打撃スタイルが崩れると、ボール球の誘いに乗らなかった王球団会長の打撃スタイルに共通する。藤井打撃コーチは「(開幕当初の)イライラは解けてきている。本人も『塁に出ることがチームのためになる』と言ってくれた」と、我慢が続く柳田の心境を代弁した。

 今季は開幕までも我慢の連続だった。昨年11月に右肘のクリーニング手術をしたが、回復が遅れ、開幕直前まで中堅の守りにつけなかった。昨年12月は投げることもバットをスイングすることもできない中、リハビリを続けた。イベントや表彰式ラッシュの中、本来は部屋でゴロゴロするのが大好きな男が、体をしっかりつくったのは苦い思い出があったからだ。

 1年目オフの11年にプエルトリコでのウインターリーグに参加した。「12月まで野球したんだからと、1月にしっかり休んだら2年目のキャンプ、全然ついていけなかったんですよ」。今だから笑い話として話すが、「今年でクビかも」と心底焦ったという。

 打率は2割6分7厘だが、出塁率はリーグトップの4割8分8厘。今日20日のロッテ戦では新記録もかかるが、初球からフルスイングする積極姿勢は変えずに打席に立つ。【石橋隆雄】

 ◆柳田が8回に押し出し四球を選び、3月25日楽天戦から18試合連続四球。70年6月17日~7月15日王(巨人)がつくった連続試合四球のプロ野球記録に並んだ。期間中に王は27四球を記録したが、敬遠6個を含めてカウント3-0からストレートの四球が15個。25四球の柳田は敬遠が1個で、ストレートの四球は3個だけ。期間中に打率3割9分2厘、11本塁打の王は勝負を避けられた四球が多かったが、柳田は3-2から15四球と、しっかりボールを見極めて連続四球のタイ記録をマークした。

 ◆メジャーは「22」 メジャーの連続試合四球記録は、ロイ・カレンバイン(当時タイガース)が47年7月2日から22日までに記録した「22」。その間に33四球を選んだ。

 ◆ソフトバンクが昨年9月以来の7連勝で今季初めて首位に立った。昨年は90勝を挙げ、2位に12ゲームの大差をつけて優勝したが、初首位は39試合目の5月17日。昨年より21試合早く首位に立ち、10勝到達も昨年の19試合目より1試合早かった。