どん底から一気にはい上がる。DeNAが13安打10得点で広島を圧倒し、連敗を5で止めた。序盤に3点を先行し、優勢に試合を進めると、終盤の7回に一挙5得点、8回には主砲・筒香嘉智外野手(24)がリーグ単独トップとなる7号2ランで締めくくった。先発ギジェルモ・モスコーソ投手(32)も気迫十分の力投で7回4安打無失点でチームの完封勝ちを導いた。

 もどかしさから解放された。8点リードの8回。筒香の打球が横浜の夜風に乗る。すでにお祭り騒ぎの右翼スタンドにとどめの1発を放り込んだ。「なかなか結果が出ていなかった。悪いと思っていなかったから続けていればかみ合う時はくると思っていた。こういう勝ち方ができたらいいですよね」。喜びよりも安堵(あんど)感に浸った。

 真っ暗なトンネル内は我慢を重ねて進むしかなかった。14日阪神戦の9回に6号ソロを放った。敗色濃厚の中での1発に「あそこで打っても意味がない。チャンスで打てなかった」。珍しく吐き捨てるように言った。主将としての責任感が心中を占める。敗戦後のロッカー室では「明日は笑顔で会いましょう」と空元気でも声を張り上げてきた。開幕直前の決起集会。「いい時も悪い時もある。どんな状況でも絶対に下を向かずに進んでいきましょう!」と皆の前で誓い合った。

 勝つための方法論は“凡事徹底”だ。当たり前のことを当たり前にやる-。1回無死一塁、石川が外角低めの変化球に食らいつきエンドランを決めた。2軍再調整から1軍復帰したロマックがきっちり犠飛を放ち先制。一挙5得点の7回は、1番桑原が内野安打で出塁しチャンスメーク。リードオフマンが今季初の3安打猛打賞で打線に火を付け、1死満塁から5番ロペスが4号満塁弾で圧倒した。

 ラミレス監督が試合後の取材で口火を切った。「みなさん、今日は笑ってもいいんですよ」。いつも以上に真剣な表情で試合を振り返りながら一息ついた。「ここまで負けるとは思っていなかった。上昇するためには下にいる時期も必要かなと思う。ここがターニングポイントとなって上昇気流に乗りたい」。まだシーズンは始まったばかりだ。【為田聡史】