ゴールデンルーキーが再び輝き始めた。阪神高山俊外野手(23)が、1番・左翼でスタメン復帰。早くも3度目の1試合4安打をマーク。チーム今季最高の猛打ショーの起点となった。20日ヤクルト戦でスタメン落ちを経験した悔しさを晴らす活躍だ。

 あの清原以来の衝撃だった。西武時代の86年、超大物ルーキーと騒がれた、かつてのスラッガーはシーズンで3度、4安打を固め打ちしている。まだ4月だというのに、高山は早くも3度目の4安打…。この事実がもっとも、この男のすごさを表すだろう。広島の夜に柔らかく、流れるようなバットコントロールがよみがえった。定位置の1番に戻り、水を得た魚になる。

 3回1死走者なし。中田に追い込まれてから2球、低めに落とされる。難しいフォークをカットして逃げられるのが強みだ。中田が耐えきれず、甘くなったフォークをとらえ、左中間を破った。今季2度目の三塁打を放ち、好機を築いた。この日はチャンスメークに徹した。序盤から猛攻の起点になり、3回までの3安打でいずれも生還。「ヒットが得点に絡んで良かったです」。汚名返上の活躍だった。右肘の不調で16日の中日戦を欠場し、その後の3試合は11打数1安打と調子を落とした。だが、抜てきした金本監督は言う。

 「名古屋で1試合休んでダメやったんかな。バランスを崩していた。でも競争意識があったのかな。純粋に練習で良かったから使った。あのままなら横田を使っただろうし、打撃コーチからも推薦があったので」

 主力は誰もが傷を負いながら戦う。不動のレギュラーになるための試練だ。アクシデントにも動じない心の強さがある。明大4年の昨年10月に右手有鉤(ゆうこう)骨を骨折すると、もどかしい日々が始まった。ギプス固定、球拾い…。当たり前のように試合に出て打ってきた男はプレーの機会を奪われ、ふと気づいたことがあった。後日、球団関係者に、あの時を問われて、こう答えたという。

 「試合に出られない悔しさを分かりました」

 他人のプレーを見るだけの日々は初心に戻してくれる貴重な時間でもあった。プロ入り前に、大切な思いに気づいていた。立ち止まっても、学ぶことがある。逆境もまた、野球人生の糧になっている。

 不調で20日ヤクルト戦はスタメンから外され、金本監督も「若手同士での競争だから」と話していた。高山は言う。「自分のことで一生懸命です」。先発復帰の初戦でルーキーの意地が光った。【酒井俊作】

 ▼ルーキー高山が4安打の固め打ち。猛打賞は3月31日ヤクルト戦、4月5日巨人戦に次いで3度目で、3度とも4安打。4安打以上をシーズン3度記録した新人は86年清原(西武)以来、30年ぶり。セ・リーグの新人では67年武上(サンケイ)以来になる。この日は第1打席が投安、第6打席が二安。高山の内野安打は今季7本目となり、大島(中日)雄平(ヤクルト)と並び両リーグで最も多い。

 ▼高山がスタメン復帰し、また新たな先発布陣に。今季の投手を除いた先発パターンは13通り目。