阪神期待の若き大砲、陽川尚将内野手(24)が聖地でプロ初アーチをかっ飛ばした。1点を追う5回。逆転の1号2ランをバックスクリーン左に運んだ。プロ3年目で金本監督も大きな期待を寄せる右の長距離砲が本拠地甲子園で大仕事。スタメン平均年齢が25・8歳。チームはこの日の2軍布陣よりも若い「超若虎オーダー」で再び貯金生活。さあ、ゴールデンウイークでがっぽり白星稼いでいくで。

 虎の窮地を救ったのは、3年目の若虎だった。1点ビハインドの5回無死一塁。奪三振ショーを演じていたDeNA今永を、陽川が一振りで沈めた。バックスクリーン左に飛び込む決勝の逆転2ラン。敗れていれば開幕以来の借金生活。将来の4番候補が、苦境を打破するド派手な一撃で、アーチストとしてのスタートを切った。

 陽川 すごく興奮しました。角度も良かったんで、いったかなと思いました。(歓声は)正直鳥肌が立ちました。1周してすごい気持ち良かったです。

 打席に入る直前、金本監督からアドバイスを受けていた。「今永のストレートを引っ張るのは難しい。だから、センター返しを心がけていこう」-。金本マジックをかけられ、1発回答。指揮官も「指示通り打ってくれて僕自身すごくうれしいホームラン」と目を細めた。

 陽川の類い希なパワーは、幼少期の“爆食い”で育まれた。「連れて行ったときは、本当にうれしそうに食べてましたね」。そう語るのは父校童(こうどう)さん。小学生の時、すしが大好物だった陽川は、家族で行く回転ずしが楽しみだった。同年代の子どもが20貫程度で満腹になっているところ、陽川は60~70貫をペロリと平らげていたという。「お皿をどんどん積んでいくんですよ。いつも顔が隠れるくらい積んでいました。周りの人もどれだけ食べるんだよって驚いてましたね」。

 陽川 やっぱり(他の)若い選手に負けたくないというのがあります。これからも持ち味を消さずにやっていきたいです。

 スタメン9人の平均年齢は25・8歳。近年の阪神でも異例の超若虎打線だった。この日の12球団の先発布陣で最も若かっただけでなく阪神2軍の27・4歳をも下回った。ただ若いだけに粗さもある。DeNA投手陣から奪われた16三振は延長突入以外での球団ワーストタイ記録。それでも数字に表せない迫力あるスイングが若さの魅力でもある。試合後の会見。指揮官はこう話した。

 金本監督 掛布(2軍)監督始め、2軍でしっかり指導して送り出してくれているので、僕も自信を持って使える。1、2軍合わせての勝利だと思います。

 虎のゴジラの一振りには、猛虎全ての力が結集していた。【梶本長之】

<陽川尚将(ようかわ・なおまさ)アラカルト>

 ◆生まれ 1991年(平3)7月17日、大阪市。

 ◆球歴 小2から「関目東ライオンズ」で三塁手として野球を始める。菫(すみれ)中では「大阪都島」で投手兼三塁手。金光大阪では2年春から正遊撃手。東農大に進学し東都2部リーグ通算105安打、23本塁打。13年ドラフト3位で阪神入団。

 ◆苦闘 入団2年目の昨春は1軍キャンプ入りも、練習試合で左肩亜脱臼。6月までリハビリを行った。

 ◆期待 金本監督の就任会見で、「振れる選手」と名指しされる。

 ◆昇格 13日にプロ入り初1軍昇格。ウエスタン・リーグで5本塁打、18打点の2冠を記録していた。

 ◆サイズ 180センチ、91キロ。右投げ右打ち。

 ▼阪神が喫した16三振は延長戦なしでの球団ワーストタイで5度目。過去94年8月13日巨人戦、01年5月24中日戦は完封負け。05年8月23日広島戦と07年8月25日中日戦は勝っている。この日の勝利で、9イニングで16三振を奪われた試合は、3連勝となった。