またまたゼロを並べて阪神が1カ月ぶり3連勝を飾った。先発岩貞祐太投手(24)が強打のヤクルト打線を7回0封。防御率0・65、55奪三振のリーグ2冠となり、3勝目を挙げた。4日の中日戦から3戦連続の完封勝利は、1970年10月以来、46年ぶりの球団最長タイ。相手打線を大型連休させて、2位に浮上した。

 ゼロ以外の数字が似合わない。そんな風格すら漂わせて、岩貞がベンチに戻ってきた。7回。2死から代打田中浩を変化球で二ゴロに仕留めた。香田投手コーチが「投げっぷりが良かったから」と追加してマウンドに送った7回も3者凡退。昨季まで2年連続「シーズン1勝」の左腕が、5月に早くも3勝目を挙げた。

 「初回に先制点を取ってもらったので、絶対にこの2点を守りきってやるんだという攻めの気持ちで投げました」

 ピンチらしいピンチは初回だけ。先頭比屋根に中前打を浴び、3番山田の遊撃内野安打などで1死満塁としたが、飯原を一邪飛、続く荒木を145キロ直球で空振り三振に封じた。雨の影響が残るマウンドで、しっかり打者を料理。昨季より「上から投げるイメージ」という投球フォームでこの日も9奪三振。防御率とのリーグトップに立った。

 同僚の優しさがうれしかった。熊本市東区の出身。実家近くの避難所には今、チームメートの直筆サイン色紙が飾られている。「子どもたちが喜ぶかなと思ったんで僕からお願いしました」。4月20日。岩貞が主力選手に頼み込んだ。藤川はサイン色紙に「頑張れ 熊本!」「前向きに」とペンを走らせた。その言葉に岩貞も奮い立った。

 歴史的なゼロのバトンもつながった。チームはこれで3試合連続完封勝ち。46年ぶりの球団最長タイ記録に金本監督も「今は投手さまさまですね。昨日、今日はね」と、投手陣を手放しで褒めた。

 背番号17をつけた孝行息子は力強く言う。「最初の頃は1イニング1イニングを中継ぎのようにと思って投げていた。今は試合を作るということを考えている。どんどん勝って首位を走りたい」。4月16日に滑り落ちた2位にようやく再浮上。いまや安定感NO・1の左腕が、先頭で引っ張っている。【桝井聡】

 ▼阪神が4日9-0中日(投手=横山-榎田-石崎)、5日1-0中日(メッセンジャー-ドリス-マテオ)に次いで完封勝ち。阪神の3試合連続完封勝利は球団最多タイで、70年10月5日1-0広島(江夏)、6日3-0大洋(村山)、7日1-0大洋(若生-江夏)以来、46年ぶり8度目。3試合とも完封リレーは球団初。なお、連続試合完封勝ちのプロ野球記録は10年中日と11年日本ハムの各5試合。

<岩貞祐太(いわさだ・ゆうた)アラカルト>

 ◆生まれ 1991年(平3)9月5日。熊本県出身。

 ◆野球歴 必由館高-横浜商大。甲子園出場なし。

 ◆ドラフト 13年ドラフト1位。阪神は大瀬良(広島)柿田(DeNA)をくじで外した後、日本ハムとの抽選に勝って。

 ◆家族 15年11月、横浜商大時代に知り合った一般女性と結婚。

 ◆特技 水泳。得意種目は背泳。

 ◆サイズ 183センチ、79キロ。左投げ左打ち。

 ◆血液型 A。 ◆年俸 1650万円(推定)。

 ◆15年シーズン 先発ローテ候補として期待されるも、5試合1勝1敗、防御率4・35に終わる。

 ◆台湾 15年12月、台湾ウインターリーグに参加、自己最速の149キロマーク。2勝0敗、防御率0・53。リーグトップ27奪三振で最優秀投手賞。

 ◆支援 地震発生後、地元熊本にカップ麺、消毒液、おむつなどの支援物資を送った。