覚せい剤取締法違反(所持、使用、譲り受け)の罪に問われた元プロ野球選手清原和博被告(48)の出身地、大阪府岸和田市で、事件を巡る論争が起きている。04年に「市民栄誉賞」を贈った岸和田市には、市民から「剥奪すべき」「すべきではない」との声が寄せられている。前日17日の初公判で、検察から懲役2年6月を求刑された清原被告。勇壮なだんじり祭りのある岸和田市は、31日の判決を固唾(かたず)をのんで見守っている。

 清原被告の初公判から一夜明けた18日、岸和田市に男性から厳しい意見が寄せられた。「早く市民栄誉賞を剥奪したらどうだ」。清原被告は巨人時代の04年に、通算2000安打を達成した。岸和田市は同年11月、地元のヒーローに市民栄誉賞を授与した。

 市の担当課によると、今年2月、清原被告が逮捕されてから20件以上の意見が寄せられている。「岸和田市民として恥ずかしい」「剥奪すべき」。一方で「すべきではない」とする意見も多い。「地元のヒーローとして東京で活躍する姿は誇りだった」「夢や希望をもらった」「功績は大きい」。担当課は「剥奪すべきという意見が全体の4割、すべきではないが6割です」としている。

 「岸和田市民栄誉賞条例」は議会の議決を経て、1988年(昭63)に施行された。受賞者が逮捕されることは想定しておらず、条例の条文に剥奪規定はない。清原被告の逮捕後、担当課は市民栄誉賞について検討したが、すぐに取り消すことはしないと判断した。一方で担当課は「判決が確定してから議会で議論してもらう可能性はある」と話す。31日の判決後、市民栄誉賞についての剥奪規定を盛り込んだ「改正条例案」を年内にも提出する予定だ。

 生まれも育ちも岸和田市の清原被告は、PL学園時代に桑田真澄氏と「KKコンビ」として春夏5季連続で甲子園に出場し、歴代最多の13本塁打を放った。当時は岸和田市民も熱狂。同市内の60代男性は「岸和田からごっついのが出たぞ」と誇りに感じ、何度も甲子園へ足を運んだという。

 岸和田市では「清原和博君の更生を支援する会」が結成され、初公判には嘆願書が提出された。担当課には市民から「更生を応援したらどうか」との声も寄せられているという。

 同市の井上博市議(65)は「清原には『早く岸和田に帰ってこい』と言ってやりたい。栄誉賞は剥奪しなくていい。どうしてもと言うなら、清原側から自主的に返してもらったらいい」と話した。だんじりの街が、その時を静かに待っている。【松浦隆司】

 ◆清原被告逮捕後の「排除」の動き 兵庫県西宮市の阪神甲子園球場にある甲子園歴史館は2月4日、清原被告が大阪・PL学園時代に使用した金属バットや複製ユニホームを館内の展示スペースから撤去した。担当者は「教育上の配慮」と説明した。東京ドーム内にある野球殿堂博物館も、プロ入り後の清原被告のユニホームやバットの展示を取りやめている。引退から5年経過した14年に野球殿堂の候補者に入っているが、外れる可能性が浮上している。