主砲の一撃で借金生活に別れを告げた。DeNA筒香嘉智外野手(24)が4回、自身10戦ぶりとなる12号決勝2ランで試合を決めた。先発今永昇太投手(22)も6回2/3を被安打6、1失点(自責0)の粘投でしのぎ、プロ初勝利から4連勝。チームも今季最多の6連勝で、3日時点で最大11まで膨らんでいた借金を完済し、開幕2戦目以来となる勝率5割復帰。4月1日以来のAクラスに再浮上した。

 一切の雑音を遮断した。4回1死一塁。筒香が打席に足を踏み入れた。バッティンググラブの面ファスナーを丁寧に重ねる。右足で土を掘って足場を固め、バットをへその前で上下に振る。右手1本でバットを立てるのと同時に左足のユニホームに手をやる。「自分の中のイメージ、感触を大事にした」。

 カウント1-2からの4球目だった。広島岡田の真ん中低めに入ってきた緩いカーブを捉えた。「くるボールをただ強く打つ。それだけです」と会心の1発を放ち、悠々とダイヤモンドを一周した。5月に入って4本目、14日阪神戦以来の12号決勝2ランを右中間席中段にまで運んだ。

 連日の大入りで大歓声の中でプレーした。むろん、大きな力になっていることは言うまでもない。その中で「無音空間」が打撃を支える。シーズン前の自主トレは母校の横浜高で敢行。室内練習場で全ての音を遮断し、素振りを日課とした。「静かなところで神経を研ぎ澄ませて、自分の体とスイングの間合いを確認する。構えて感覚が合えばスイングする。そうでなければ振らない」。1スイングに2分以上もかけ、本番と同じルーティンで打撃を磨いてきた。

 10日に右脇腹の肉離れから復帰し、チームはその後、11勝3敗1分けの快進撃。1カ月足らずで最大借金11を完済したが、筒香は余計な“音”を封じた。「『借金』という言葉を繰り返せば、誰かが描いたものの中に入ってしまう。やることは変わらない。最後までやり続けるだけ」。己を信じて、ペナントレースを突き進む。【為田聡史】

 ▼DeNAは3月26日以来の勝率5割。今月3日には最大借金11あったが、4日から15勝4敗1分け。DeNAが2桁の借金を完済するのは05年以来7度目。最大借金12あった01年に借金10から15試合(12勝2敗1分け)で勝率5割へ戻したが、借金11からは93年の21試合(16勝5敗)を抜くスピード完済。