心穏やかに、じっと待った。日本ハム中田翔内野手(27)が覚悟を決めた。8回無死一塁。巨人高木が得意球のカットボールを初球から2球続けた。運命の3球目に臨む前に「直球は捨てていた」と読み、絞り込んだ。カウント1-1から、標的はカットボールのみ。狙い澄ましていた121キロが外角いっぱいだが、高めに入る。フルスイングで引っ張り、完璧な弾道で12号を左翼席へ突き刺した。

 会心の働きだった。「(大谷)翔平を勝たせることができて良かったよ。3連敗は嫌だったからね」。好球を仕留めた伏線は、その前の3打席。高木と肌を合わせて2三振、1四球。一塁守備に就くと「何か(タイミングが)合わんなぁ。合わんなあ」と、ぼやきながら対策を練っていた。直球に手を出さず、カットボールで勝負をする。1試合の中でのわずかな経験値から導き出した必勝プラン。ひと振りで答えを出した。

 祝砲になった。4回の守備。日本最速163キロをたたき出した大谷に試合中、ぼんやりと考え込んだ。「速かったね。すごい。何で(相手打者は)あんな球が打てるんだろう? って、ずっと思っているよ」。自身も、大阪桐蔭時代は「二刀流」で脚光を浴びていた。プロの世界で、異次元の光を放つ後輩。「何とかしたかったよ」と奮い立った。ここ9戦で計7本塁打と、量産モードに突入した。「すごく、いい勝ち方ができたね」。大谷の歴史的な一戦に、花を添えた。長距離砲の王道を突き進む誇示が、放物線になった。【高山通史】