虎が泥沼連敗も、交流戦最下位も脱出や。「日本生命セ・パ交流戦」日本ハム戦(札幌ドーム)で、窮地を救ったのは阪神大和外野手(28)だ。2番セカンドで7試合ぶりに先発出場し、3回に先制のV二塁打。6回の守備では美技を披露。連敗が5でストップしたチームが今日12日に迎えるのは「二刀流」大谷との一戦。強敵を倒し、浮上のきっかけをつかんでみせる。

 「中堅組」の度胸と経験がモノをいった。迷いがない。大和は直球狙いで左足を踏み込み、左腕吉川の高め144キロを引っ張った。3回1死一、二塁から左翼線に先制2点二塁打。厳しい表情のまま右手を上げる姿に意地を見た。

 「やっとスタメンで出られたので、なんとか結果を出そうと思って打席に入りました。若い選手が目立つ中で、中堅はなかなか目立ちにくいところですけど、しっかりと中堅も頑張っているというところも見せられて良かったです」

 負傷離脱していた西岡が1軍復帰し、若手外野手も再び台頭。直前の敵地ロッテ3連戦では1度も出番がなかった。打席に立ったのは5試合ぶり、スタメンは7試合ぶりだ。待ちわびたチャンスで決勝打を決め、得点圏打率3割2分1厘の勝負強さを思い出させた。

 「そりゃあ恥ずかしかったですよ。あの恐怖と比べたら、スタメンのプレッシャーなんて…。少しは強くなったんですかね」

 昨季、自分でも驚く“初体験”があった。ある試合で緊迫した終盤に代走登場。最大限に二盗を警戒された状況でスタートを命じられた時だ。リードしようとすると、右足が小刻みにガタガタ震えだしたという。代打バントや代走、守備固め。重要局面で得た経験の1つ1つは今、強いハートの土台となっている。

 今年は常に強振できる。「このコースの、この球種を狙うと、やっと割り切れるようになった」。配球を研究し、経験を積み重ねて度胸がついた。勝負強さは1日にして成らず、だ。

 二塁守備でも美技を披露した。6回無死一塁。2番中島の打球傾向を分析し、二遊間寄りにセット。一塁走者西川のスタートと同時に二塁ベースカバーに走り、そのままベースより遊撃側のゴロをバックハンドキャッチ。一塁へのジャンピングスローを決め、ピンチ拡大を防いだ。攻守ともに持ち味全開だ。

 逆転サヨナラ負けから一夜明けで連敗を5で止め、交流戦最下位から脱出。金本監督は1週間ぶりとなる白星の味を冷静にかみしめた。「連敗は年に何回かするものでしょ? 正直、内心焦るところもあったけどね。昨日みたいな負け方をすると。(連敗は)本来はあってはいけないんだけど、それが今来ただけ」。借金3。首位広島に4・5ゲーム差。猛虎はまだバタつかない。【佐井陽介】

 ▼大和が打点を挙げた試合で、阪神は今季8勝1敗の勝率8割8分9厘。打点のついた9安打のうち、殊勲安打が7安打(先制3、同点2、勝ち越し2)。チームでは高山8に次ぎ、原口と並び2位。得点圏打率は3割2分1厘(28打数9安打)で、それ以外での2割3分9厘から大幅に跳ね上がる。