踏んだり蹴ったりだ。中日はナゴヤドームで今季初の同一カード3連敗を食らった。借金はワーストの10、5位に転落した。起爆剤に期待されたドラフト1位小笠原慎之介投手(18)はまたも勝てず、杉山翔大捕手(25)までが頭部負傷で緊急搬送された。ビシエドに後半戦初安打が出たのが好材料だが、V字回復への要素が乏しい。

 ドーム内の空気が鉛のように重い。悪いときに、悪いことが重なってしまった。5回2死一塁。バレンティンが空振りしたバットが捕手杉山の頭部をもろに襲った。倒れたまま動けない。裏側では血相を変えた球団関係者が走り回っていた。杉山はほどなく救急車で運ばれていった。

 グラウンド上でも意識ははっきりし、重傷ではないという。ただ頭部だけに復帰時期には慎重になる。ここまで半分以上の48試合に先発し、勝負強さも光る主力捕手だけに心配だ。

 今の中日には、そんな不安を吹き飛ばす力もなかった。5回3失点の小笠原のあとを継いだ福谷が2失点し4点差に広げられた。その裏の無死二、三塁では堂上の遊ゴロによる1点だけ。勢いはつかなかった。

 ビシエドが長いトンネルを抜けたのは数少ない好材料だった。3回の第2打席、2死二塁で右翼にライナー性の適時打を放った。後半戦6試合目、25打席目での初安打だった。前日は試合後、客に罵声を浴び、平田が応戦するという騒動があったばかりだ。

 「ファンが怒るのは心配してくれているからだと思う。自信を保つのは難しいが、我慢を心がけている。僕が言われるのもチームが言われるのも一緒。だから平田がああ怒ったんだと思う」。悔しさは誰よりも秘める。男は黙って、バットで答えを出した。

 ヤクルトに3連敗。5位転落、借金10という惨状に谷繁監督は「現実として受け止めないといけない。常に前を向いてやっていくしかない」と力を込めた。チーム全体の意地が試されている。【柏原誠】