巨人阿部慎之助捕手(37)が「鵜(う)飼い」を体現して広島をのみ込む。25日、チームは今日26日からの首位広島との直接対決に向けて岐阜入りし練習を行った。当地では長良川鵜飼いが有名。4番阿部は、ウが獲物のコイをのみ込まんばかりの勢いを見せることを誓った。10ゲーム差で首位を優雅に泳ぐ赤きコイを仕留め、鵜匠(うしょう)の高橋監督に初戦勝利をもたらす。

 伝統と由緒ある鵜飼いが、阿部の広島攻略のイメージだった。「川でウが魚を捕るんでしょう。知っているよ。広島をのみ込みたいね」と豪快に笑った。

 鵜匠(うしょう)が船から十数羽のウを操り、魚を取る漁法。特に広島との初戦の地、長良川の鵜飼いは有名だ。日本唯一の皇室御用の鵜飼いでユネスコ無形文化遺産登録を目指す。一般的にはアユを捕獲するが、コイも獲物の1つ。首位を独走するコイを丸ごとのみ込む。阿部は捕獲の瞬間に向け、最終調整のフリー打撃でバットを振り続けた。

 ウを自在に操る“鵜匠”の高橋監督も広島との対戦前に、一番熟練された阿部を真ん中に据えた。前日24日のDeNA戦で今季初めて4番起用し、7者連続安打などで9得点。「打順は我慢して変えなかったわけじゃない。こっちの方が点が入ると思ってね」と勝利へシンプルに決断した。

 阿部が巨大なコイをくわえるために、周りのウの動きも大事になる。指揮官は「やはり1、2番だよね。今年は誰が来ても率が良くない。(1番)長野が40~50発を打てるならいいけど、そうじゃないから塁に出る方がいい」とキーマンに挙げた。今季はここまで1番打者が打率2割3分4厘、2番が2割2分3厘と低調だ。新打線の1番長野、2番橋本到がどこまで機能するかで“収穫量”が大きく変わってくる。

 広島とは10ゲーム差をつけられるが、12試合の直接対決を残している利点もある。高橋監督は「唯一、他力本願じゃないからね」と立ち位置を強調した。阿部も「監督のために力になりたい」と誓う。長良川にコイを沈め、奇跡への潮流とする。【広重竜太郎】