80年ぶりの猛打ショー! 阪神が4回、14人攻撃で一挙9点を奪い、ヤクルトに快勝した。1イニング10打数連続安打(1犠打2四球を挟む)は1リーグ時代の1936年(昭11)以来の球団記録。猛打の中心が5番原口文仁捕手(24)だった。先制3ラン&2点打で1イニング5打点。5月6日以来の3連勝をド派手に飾った。

 届け、届いてくれ-。原口は打席でじっと行く先を見つめた。打球は、吹きすさぶ浜風にあおられて上昇。左翼バレンティンの背中がフェンスにつく。数秒の間の後、虎党が沸き上がった。原口の願いは届いた。

 「これだけたくさんのファンの人が集まっていただいたので、もう必死のパッチで打ちました。ぎりぎりでしたけど、スタンドまで届いてくれて良かったです」

 先制の9号3ラン。4回、連打でつくった無死一、二塁の好機を見事にものにした。原口の一打を号砲に、2戦連続2桁安打中だったウル虎打線も勢いに乗る。先頭の3番江越から一巡してこの回2打席目の6番ゴメスまで、犠打と2四球を挟み安打、安打の雨あられ。終わってみれば1リーグ時代以来、80年ぶりとなる10打数連続安打。背番号94のパワーを生かした一撃が、猛虎の歴史をまたつくった。

 本塁打を生む原口の怪力は、思い出すだけで震え上がる「地獄の練習」で培った。帝京時代、新チームになってからチーム全体で始めた「白飯トレ」。部員全員が自宅から白ご飯3合を詰め込んだプラスチックの食品保存容器を3つ持ち寄り、練習の前後にそろって食事した。「あれはきつかったですよ。今やるのは絶対無理ですね」。食べ残しは一切許されず、部員同士でご飯を胃袋にかき込んでからハードな練習を行うことで、プロでも活躍できる屈強なボディー&パワーをつくり上げたのだ。

 「ファンの方に楽しんでもらったと思います。明日もしっかり準備して頑張ります」

 原口個人にとっても、1イニング5打点は野球人生で初めての経験。チームとしても03年5月31日巨人戦で金本監督がマークして以来の快挙だ。これには指揮官も「今年初めてじゃない。原口の3ランも2点タイムリーも大きかった。守りでも完封で助けてもらった。投打両方で助けてくれました」と上機嫌だ。

 得点が入るたびに奏でられた六甲おろし。虎党も「歌わせて」とは願ったが、まさかここまでサービスしてくれるとは。ファンにとってもチームにとっても忘れられない夜になった。【梶本長之】

 ▼阪神は4回に2四球、1犠打を挟んで10打数連続安打。1イニングの連続打数安打記録は09年6月14日ヤクルトの11打数で、10打数以上は9度目。阪神では1リーグ時代の36年4月30日名古屋戦(球団創設2戦目)の1回に記録して以来、80年ぶりのタイ記録。前日まで阪神は勝率と打率が最下位。最下位チームが10打数連続安打は98年4月22日ヤクルトに次いで2度目だが、勝率と打率の両方が最下位で記録したのは初。

 ▼原口は4回に3ランと2点適時打で5打点。1イニングの最多打点は51年10月5日飯島(大映)93年5月19日池山(ヤクルト)の7打点で、5打点以上は05年5月4日フェルナンデス(西武)以来15人、18度目。セ・リーグ6人、7度目で、阪神では03年5月31日巨人戦の9回にマークした金本に並ぶ記録。

 ▼阪神の3連勝は5月4日~6日以来、今季4度目。今季はこれまで2連勝後の敗戦が6度あった。今季の連勝は3が最長。