3連勝で首位にピタリ。日本ハムは、伏兵の杉谷拳士内野手(25)が同点の8回に決勝の2点適時打を放ち、ロッテに競り勝った。2死満塁の好機で右中間に運んだ。途中出場したムードメーカーの貴重な一打で、リーグ70勝一番乗り。貯金を今季最多27に増やし、首位ソフトバンクにゲーム差マイナス0・5、勝率1厘差をキープした。

 3週間前のデジャビュのようだ。杉谷が再び、試合を決めた。同点の8回2死満塁。打席へ向かう前、栗山監督から心を揺さぶられた。「『行くぞ。勝負するぞ』と。何とかしてやろうと思った」。初球はフォークに空振りも、積極的だった。続く2球目の直球を、鮮やかに右前へはじき返した。決勝の2点適時打に一塁塁上でガッツポーズだ。

 ベンチスタートも同僚の熱い気持ちを、感じ取っていた。7回の守備から途中出場。8回は2死からレアードの左前打を起点に、市川と中島が粘って死球と四球を選んで打席が回ってきた。「みんながつないで回してくれた。市川さんも、タク(中島)も必死に粘った。僕も気持ちが入った」。ソフトバンク勝利の情報は右翼後方のビジョンに映し出されていたが「その時は見ていません」。目の前の試合を勝つために集中力を高め、接戦にケリをつけた。

 「前回も満塁でしたね」。3日ロッテ戦(QVCマリン)の5回2死満塁。代打で走者一掃の適時三塁打を放っていた。「前回は初球、今回は2球目。とにかく積極的に行きたかった」と、殊勲打を再現した。栗山監督も鮮明に覚えていた。「この前と全く同じ状況(2死満塁)。打つと思ったよ。よく打った」。不思議な巡り合わせに感心しつつ、素直に結果を出した杉谷をたたえた。

 試合前から“大当たり”だった。練習中に近藤が放ったティー打撃の打球の跳ね返りが体を直撃。ノック中には右手中指をボールに突いてしまい、爪から流血。試合中も患部にはテーピングを施していた。試合後には「今日は、よく当たりましたね」と、苦笑い。ヒーローインタビューを終え、ロッカールームに戻ると田中賢から「あそこで打たなかったら、お前のこと、しばこうと思ってた」と、ひと言。打ったからこそ食らった、思わぬカウンターパンチだった。

 元気印の一振りで、チームはリーグ一番乗りで70勝に到達。現時点でリーグ全球団に勝ち越し、貯金は今季最多の「27」となった。栗山監督は「100勝だったら、いいけどね。苦手なチームを作ると苦しくなる。その先の戦いもあるから」と、気を引き締める。ソフトバンクとのゲーム差は「マイナス0・5」のまま。珍現象は続くが、日本ハムの快進撃も続いていく。【木下大輔】

 ▼日本ハムが貯金を今季最多27に伸ばした。貯金27は06年9月26日ソフトバンク戦(札幌ドーム)で勝利して以来、10年ぶり。04年の北海道に本拠地移転後の最多貯金は、06年に2度マークした28。球団最多は前身東映時代の61年に記録した35。