アクシデントに負けず、広島の優勝マジックは「16」となった。粘りの逆転勝利を呼んだのは先発野村祐輔投手(27)だ。6回2死一、三塁で中日荒木雅博内野手(38)のバントを処理した際にアクシデントに見舞われた様子で降板したがなんとか2失点に抑える登板だ。打線は8回2死一、三塁から鈴木誠也外野手(22)の三塁内野安打で同点、9回1死満塁で菊池涼介内野手(26)が勝ち越し適時打を放って執念の白星をつかんだ。歓喜の瞬間は近づいている。

 苦しみながらもチームに勝機をつないだ。立ち上がりから野村はセットポジションからの投球が続いた。1回、2回と2死満塁のピンチを招く。1回は捕手石原ら内野陣が、2回は畝投手コーチもマウンドに向かった。2回までで球数は56球。間合いは長く、テンポの悪い投球が田中の失策という味方の守備にも影響した。打線のリズムを作れなかった。

 徐々に立て直し、同点に追い付いた6回に再び勝ち越しを許した。無死一塁から自らの野選でピンチを広げると、2死一、三塁から荒木に芸術的とも言えるセーフティーバントを転がされた。打球を追った際に左足首をひねった影響で降板。幸運にも腫れはなく、本人は「次は大丈夫だと思います」と話した。

 7月22日阪神戦の12勝目から白星に遠ざかる。シーズンを通して投げる経験は、新人王を受賞した12年以来だ。同年は8月22日DeNA戦の白星を最後に7試合勝ち星なく、5連敗のままシーズンを終えている。今季も開幕から先発スタッフの一角を守り、登板機会のない交流戦終了後に1度抹消されたのみ。1カ月以上勝てていない。

 1年を通して投げきるために食事生活を改善した。栄養バランスを整え、練習中や試合中にも炭水化物の成分をスピーディーに吸収できるサプリメントを摂取。ドジャースへ移籍した元チームメートの前田と同じものを取り入れて、肉体維持に努めた。勝ち星に恵まれない中、粘って試合を作っている。

 粘りが終盤の逆転につながり、巨人も敗れたことで優勝のマジックを「16」に減らした。右腕は「今はチームが勝つことが一番。チームが勝てて良かった」と自身に勝ち星がつかなくても、優勝へまた1歩近づく勝利に満足していた。着実に頂点へ歩を進めるチームは、野村の復調を待っている。【前原淳】