ラミチャンス打線に幸運が舞い込んだ。DeNA筒香嘉智外野手(24)が、ポテン安打のラッキー決勝打で連勝をもぎ取った。1点を追う8回2死一、二塁、左翼上空に上がった飛球が“逆浜風”に戻されて外野で弾む逆転の二塁打となった。劣勢をひっくり返す一打で球団史上初のクライマックスシリーズ(CS)進出へ前進。カード勝ち越しを決め、5位阪神の自力CSを消滅させた。2ゲーム差で迫る4位ヤクルトとの一騎打ちの戦いになってきた。

 緑の芝生の上で白球が弾んだ。筒香が左翼方向へ飛球を打ち上げた。「終わった…と思いました」。凡打濃厚の打球が、左翼から右翼側への“逆浜風”に押し戻される。深めの守備位置だった左翼手・高山の前に落ちた。「ちびってもしょうがない。俺が決めるという気持ちで、自分を信じて思い切ってスイングした。ラッキーでした」。決勝2点適時打を興奮気味に振り返った。

 極限の集中力と執念が幸運を呼び込んだ。6回2死一、二塁の第3打席。初球で右足甲に自打球が直撃し、もん絶した。試合後はテーピングを施してバスに乗り込んだが「病院には行きません。もし検査して折れてたら試合に出られない。明日? 大丈夫です」。二者択一ではない。強行出場する選択肢しか頭にはない。決勝打で二塁への走塁でも「試合中は全く、痛みを感じない。走れるし、問題がないということ」と一蹴した。

 主砲の躍進に導かれ球団史上初のCS進出へ大きなチャンスが到来している。5位阪神とのカード勝ち越しを決め、自力CSの可能性を消滅させた。レース展開は三つどもえから、2ゲーム差で迫るヤクルトとの一騎打ちに進展。ラミレス監督は「1チーム減ったことは我々にとっていいこと。スワローズもいい野球をしている。気持ちを切らさずに戦っていく」と鋭い眼光のまま言った。

 ここまできたら体当たりで突き進むのみだ。筒香は「自分の結果はどうでもいい。みんなで絶対にCSを勝ち取るという気持ちを持って、その思いだけで戦っている」。この日は、7回までわずか2安打に封じられたが、石川の犠飛で食らいついた。7回に一時は勝ち越しを許すも、予想外の一打で試合をひっくり返した。

 ちびってもしょうがない-。残り試合はヤクルトとの直接対決7戦を含む17戦。絶対的主砲の筒香を中心に勇ましく戦い抜く。【為田聡史】

 ▼筒香が8回に逆転の2点二塁打。肩書付きの安打は29本目、勝利打点は15度目となり、両部門ともに筒香がリーグトップだ。7月のDeNAは筒香が打率4割2分9厘、16本塁打と打ちまくって14勝10敗と勝ち越したが、筒香が打率2割4分7厘に抑えられた8月は9勝15敗と負け越し。今季、筒香の月間打率が2割台だった3、4、8月はすべて勝率3割台で負け越しており、初のCS出場は筒香のバットにかかっている。