逆転CSへ、望みをつないだ。4位ヤクルトが、3位DeNAとの直接対決に逆転勝利し、ゲーム差を「3」に縮めた。左脇腹痛で離脱していた雄平外野手(32)が7回、復帰戦で決勝打を放った。負ければ、自力でのCS進出が消滅していた試合。昨季のセ・リーグ王者が、土壇場で意地を見せた。

 ゆっくりと、打席に足を踏み入れた。3点差を追いついた7回。なお2死一、三塁。「代打・雄平」は、押せ押せモードに気持ちが高ぶった。初球から、バットに込めた。真ん中高め145キロ直球を空振り。「気持ちが入っていたんでしょうね」。圧倒的なスイングスピードに、球場も騒然とする。カウント1-1からの3球目。「詰まってましたね。僕は捕られると思っていたけど、何とか打てて良かった」とがむしゃらに、内角高め145キロ直球に食らいついた。中堅前にポトリと落ちる決勝打。1打席勝負の場面で、気持ちで打った。

 ようやく舞台に戻ってきた。7月26日阪神戦(甲子園)以来となる1軍。左脇腹痛で同27日に出場選手登録を抹消された。「脇腹は8月くらいに治ったんですけど、肘の方がね」。リハビリ中、古傷の左肘の靱帯(じんたい)も再発した。塁間のキャッチボールも出来ないほど。数日前にネットスローを始めたばかりの状態だった。予想以上に長引く2軍調整期間に、焦りと不安を募らせていた。

 逆転CS争いを続けるチームに自分がいない。「1軍の試合をテレビで見て、もどかしいだけだった。早く戻りたいのに、最初はバッティングも出来なかったし」と、悔しさをかみしめながら埼玉・戸田で汗を流し続けた。試合前練習では、「やっぱりまだ怖い部分がある」と不安な表情を浮かべていた雄平。心のもやもやを、一振りで拭い去った。

 2連敗で迎えた直接対決の第3戦。負ければ、自力でのCS進出が消滅していた。逆転勝利でつかみ取った「3」ゲーム差。真中監督は「選手も大事な試合ということは理解していた。本当にしぶとく拾ってくれた」。雄平は「諦めていない」と力強くファンに誓った。3位DeNAの背中は、くっきりと見える。今日9日は、本拠地・神宮で巨人戦。逆転CSへ、意地の見せどころだ。【栗田尚樹】