選手を見極め、理解し、信じること-。就任1年目のDeNAアレックス・ラミレス監督(41)が日々、変化するペナントレースで若手を育てながら用兵を的確に操り、大きな成果をもたらした。昨季最下位から11年ぶりAクラスへと押し上げ、就任前に球団と交わした「Aクラス入り」の約束を果たした。球団は21日にも2年契約の2年目となる来季の続投を要請することが決まった。

 総立ちのスタンドを背に興奮と安堵(あんど)感が入り交じる。勝利のハイタッチの列で、ラミレス監督が山崎康からCS決定の記念球を受け取った。「(監督就任)1勝目と同じように私の宝物になる。少しではない。ものすごくほっとしている。就任前、BクラスからAクラスに変えると球団に約束した。果たすことが出来て良かった」。見開いた目が真っ赤に充血していた。

 現役時代に培った「勝負の嗅覚」は監督になっても健在だった。最も顕著に表れたのは1軍と2軍の線引きだった。「交流戦までは若い選手を積極的に試した。それ以降はAクラスの可能性があると信じた選手たちをキープし続けた」。昨季と比較すると、1軍に登録した選手の人数に大差はないが、交流戦後以降の1、2軍の入れ替えは52→32に激減させた。「勝つか、成長させるか、その線引きは難しい。交流戦後から勝つためのモードだけに切り替えた」と明かした。

 就任直後、チームの課題として挙げたセンターラインを強化した。正捕手に新人戸柱を抜てきし、中堅に桑原、遊撃は倉本、この日は三塁だったが二塁で宮崎を使い続けた。「私は彼ら4人を新たにレギュラーとして使った。レギュラーになれると信じた彼らの働きがシーズンを通してフレッシュに保たせてくれた」。桑原に関しては打順も1番に固定し、能力を開花させた。

 外国人監督特有の発想も相乗効果を生んだ。長丁場のシーズンを短期的に区切り、目標を流動的に設定した。首位広島とのゲーム差が開き、3位で迎えた残り50試合の時点では「下位のチームとどう戦うか」と現実を直視させた。さらに「ここから50試合ではなく20~30試合が最も重要。それが終われば順位はおのずとイメージできる」とシーズンを逆算して重要な時期を明確にさせた。“1戦1戦最後まで”を口癖に、より具体性を持たせてチームのかじを取った。

 1つの課題をクリアした。2位巨人とのゲーム差は2・5で残り4試合。「ホームでCSを戦えるチャンスはある。全力で2位を狙う」。22日ヤクルト戦(横浜)からは次なるミッションに入る。【為田聡史】