自立できる男は強い。阪神岩貞はピンチでも心が乱れない。中盤は2度も先頭に四球を与えてしまう。失点につながるパターンだ。「四球を出しても『出してしまった』と意識しないことです。精神的なことから崩されないように」と言い聞かせた。4回無死一塁で福田を低め直球で二塁併殺打。5回も無死一塁を断った。

 細やかな男は強い。この日の試合直前、ブルペン投球で乱れ、明らかに不調だった。岩貞は「調子は良くなかった。要所でポイントになる球を(コンビを組む原口と)お互いが意識して投げきれた」と振り返る。5回は1死一、二塁になったが、丁寧に投げて後続を断った。6回無失点で、今季9勝目に達した。

 ブレない男は強い。一塁側だったプレートの踏み位置を三塁側に変えて今季は成功。だが、左投手は右打者に角度をつけるため、一塁側も理想だろう。快投を重ねた春先に、首脳陣から「一塁側から投げるのも考えてみればどうだ」と提案された。しばし考えた岩貞は「やっぱり無理です。まだ怖いです」と断ったという。この日も三塁側から力投した。立ち位置を愚直に貫き、いまや先発の柱だ。

 秋に勝つ男は強い。9月は4連勝、防御率0・58で月間MVPの最右翼だ。勝敗も五分に戻した。残り3戦。2桁勝利に達するか注目が集まる。【酒井俊作】