聖地で決める! 阪神のルーキー高山俊外野手(23)が、球団の新人最多安打に王手をかけた。1回、中日ドラフト1位左腕小笠原から痛烈な投手強襲安打。98年坪井智哉(現DeNA打撃コーチ)の球団記録135本にあと1本とした。残り3試合はいずれも甲子園。超変革のシーズンを駆けてきたヒットマンが、スパートをかける。

 ついにリーチだ。初回。3番に座る高山は、いきなり輝きを放った。中日のルーキー左腕小笠原が投じた外角スライダーを迷いなくフルスイング。瞬きも許さない痛烈な打球は小笠原の右すね付近を直撃した。投手強襲の内野安打でドラ1対決を制し、球団記録の偉業に王手をかけた。

 「1本1本やっていくしかないし、昨日は選べなかった四球をチャンスで取れたのは1つ良かったところかなと思います」

 この一打で、98年坪井が記録した球団新人最多安打記録の135本まで残り1本となった。ここまで数々の記録を塗り替えてきたルーキーが、いよいよ球団史の頂点に立とうとしている。記録に浮かれることはなく、5、7回にはいずれも四球を選び、好機を演出。9回の最終打席はフェンス際まで飛ばす左飛だったが、3番打者としての役割も十二分に果たし、最下位回避の勝利に貢献した。

 この日記録した内野安打は、高山の1つの武器でもある。50メートル5秒8の俊足を生かし、134本の安打のうち、内野安打は実に22本を数える。率にすると、規定打席到達者ではDeNA倉本(16・7%)に次ぐセ・リーグ2位の16・4%を記録する。高山自身も内野安打の重要性を説く。

 「全力疾走は当たり前ですし、大事だと思うのでこれからもやっていきたいですね。自分は一生懸命プレーすることしかできないので」

 どんなにボテボテの打球でも懸命に一塁を駆け抜ける。ハツラツとしたプレーが、ここまで積み上げてきた安打記録を支えている。 今季、残りは3試合となった。いずれも本拠地甲子園でのゲームだ。訪れた虎党を笑顔にするため、高山は有終の美を飾るつもりだ。「1年間ずっと1軍にいさせてもらった。甲子園で残り3試合。少しでも多く、ファンの皆さんを喜ばせるプレーをできればいいかなと思っています」。猛虎史に残る大偉業。必ず聖地で決める。【梶本長之】