記念日に歓喜の勝利だ。広島緒方孝市監督(47)が「ルーズベルト・ゲーム」を制し、セ・リーグ代表の座を勝ち取った。DeNAとのCSファイナルステージ第4戦は「8-7」の接戦。頼もしい攻撃陣と信じる投手陣の働きで、日本シリーズ進出を決めた。10月15日は1975年(昭50)に広島が初めてリーグ優勝したときと同じ。次は32年ぶり日本一を狙う。

 「ファンのみなさま、クライマックス出場、突破、おめでとうございます!」。9月10日、巨人を倒してリーグ優勝を決めたときと同様、寡黙な男のパフォーマンスだ。勝利セレモニーで両手を広げ、声を張り上げると、スタジアムを真っ赤に埋めた観客から割れるような歓声が起こった。

 その陰で緒方監督はフラフラになっていた。1回に大量6点を先制しながら、DeNAの必死の逆襲を食らい、終わってみれば8-7。かつて米国のルーズベルト大統領が「野球で最も面白い点数」と言ったとされる展開が、こんな大事な局面で出てしまった。

 「ホンマ、最後、意識が飛びそうになって…。倒れそうでしたわ…」。歓喜の輪から離れ、1人になると苦笑を浮かべながら、そう明かした。

 自分との闘いだった。自軍先発がジョンソン、野村と少ない失点が予想できる1、2戦目は、田中が出ると2番菊池に犠打のサインを出した。黒田先発の3戦目の1回無死一塁では、強攻策に出たが菊池が凡打し、無得点。この日は一転して犠打の作戦に出た。田中が絶好調のあまり、攻撃面での変化がより目立った。

 「機動力を含め、攻撃したいという気持ちがあって。3戦目からは投手の力関係を考え、打っていこうと思っていた。でも初戦からの流れでバントが点につながるのが、このCSの流れかなと。今回はこっちが正解だったのかな」

 自らの理想を超え、試合の流れを読み切り、決断して、勝負に出た。そして勝ち取った日本シリーズ挑戦権だ。10月15日は、くしくも広島が初優勝した75年と同じ月日。球団にとって記念の日にセ・リーグ代表の座を決めたのだ。

 「次に、十分、手ごたえを感じてます。ただひとつ、カープの野球をやるだけ。全力で頑張ります」。指揮官はそう言い切った。相手はどちらでも構わない。84年以来、32年ぶりの日本一へ。歓喜のシーズン、最後を締める戦いに向かう。【高原寿夫】

 ▼広島が91年以来、25年ぶり7度目の日本シリーズ出場を決めた。過去6度はCSのなかった時代で、CSを勝ち抜いて出場は初めてになる。シリーズ出場のブランクが長かったチームとシリーズの結果を出すと、38年ぶりの98年横浜4勝2敗でV、31年ぶりの05年ロッテ4勝0敗でV、26年ぶりの99年ダイエー4勝1敗でV、25年ぶりの06年日本ハム4勝1敗でV。出場が25年ぶり以上のチームはすべて日本一になったが、今年の広島はどうか。