広島野村祐輔投手(27)が“師匠”にバトンをつないだ。先発し、日本ハム打線を6回2安打1失点(自責点0)に封じて勝ち投手に。序盤から走者を背負いつつ、要所を封じる巧みな投球術をみせた。明日25日の第3戦先発は、野村が慕う黒田博樹投手(41)。しっかりと「王手舞台」を整えた。

 誰よりも勝てる男の真骨頂だった。1点リードの4回2死一、二塁。大野のバットをへし折り、完全に抑えた打球だった。だが、ゴロは不規則にはずみ、名手の二塁菊池が捕れない。まさかの適時失策で同点に追いつかれた。だが、マウンドの野村は冷静だ。「いつも何倍も助けてもらってます。何とか1点でしのげて良かった」。冷静に後続を断って、勝機を探った。

 中盤以降、明らかにテンポアップした。「テンポを上げるのは自分の持ち味。試合を何とか形にしないといけない。今日はうまく修正できました」。5回1死後、中島に抜群の制球を披露。ズバッと外角低めに速球を収め、見逃し三振だ。3者凡退で片づけ、日本ハム打線の反撃をかわす。6回もクールに振る舞った。初球の低めスライダーでストライクを入れて2球目は緩いカーブを低めへ。フルスイングはあっけなく空を切る。早々と追い込み、外角低めスライダーで空振り三振。再び3人で抑え、攻撃のリズムを作った。

 本調子ではなかった。序盤は球が上ずったが、崩れない。1回、四球も絡んで2死一、二塁になるが、後続を断った。踏ん張らなければいけない理由がある。公私ともに慕う黒田の現役引退に接し、最高の花道を作るのが最大の使命だ。前日22日も「日本一になって良い形で黒田さんを胴上げしたい」と言い切った。黒田とは赤い糸で結ばれる。6年前の話だ。10年に明大のキャンプで米国アリゾナ州を訪れた際、同じ施設を用いていた縁でドジャース黒田が明大ナインの前で話をした。そこで不意に、野村の目を見て声を掛けたという。

 「カープで2年後に会おう!」

 その言葉に導かれるように11年ドラフト1位で広島入り。昨年、6年越しの再会を果たした。投球時、投手板の一塁側に立つよう助言されて覚醒。今季は16勝3敗で最多勝、最高勝率8割4分2厘を誇った。この日も同じ立ち位置から球を出し入れ。6回2安打1失点で勝ち投手になった。

 舞台を札幌ドームに移す25日の第3戦は黒田の先発が決定。現役最終登板になる可能性もある。太い絆そのままに魂を込めたバトンパスだった。【酒井俊作】

 ▼シリーズ初登板の野村が6回を1失点に抑え白星を挙げた。広島は第1戦も先発のジョンソンが勝利投手で、第1、第2戦と先発投手が白星を記録したのは15年ソフトバンク以来16度目。今回のように2人ともシリーズ初登板だったのは05年ロッテ以来、11年ぶり8度目だ。ジョンソン、野村はともに1失点だったが、ジョンソンはソロ本塁打、野村は失策の失点。2人合わせて走者を得点圏に置いた場面では10打数1安打で、適時安打は1本も許していない。ちなみに、第1、第2戦と先発が白星を挙げたチームは過去15度のうち79年近鉄を除いた14チームが日本一になっている。