男(おとこ)気最終章を見逃すな。今季限りで現役を引退する広島黒田博樹投手(41)が今日25日の日本シリーズ第3戦に先発する。引退を発表してから初で、最後になるかもしれない先発は、11年ぶりとなる札幌ドームでの登板。現役20年の集大成を発揮し、日本一に王手をかける。

 11年ぶりのマウンドの感触と見える景色が気になったのか。黒田はおもむろに報道陣の前を歩き、札幌ドームのマウンドに立った。外野エリアで最終調整の最中、ブルペン捕手を座らせてのキャッチボールを早めに切り上げ、実際にマウンドで投球練習を始めた。捕手を立たせたまま3球。相手を座らせると、次第に力が入った。カーブ、ツーシーム、カットボール…。変化球を交え、セットポジションからも投げた。練習後は「別に気にならなかった」とすっきりした表情に変わっていた。

 引退発表は「シリーズが終わってから」の思いもあったが、チームメートへの直接の報告や、ファンに最後の勇姿を見てもらうために18日に公表した。注目度は増し、大きな重圧がのしかかる。2連勝でバトンを受け、今日勝てば、日本一に王手。現役最後のマウンドとなる可能性もあるが、そこは黒田は特別視しない。

 「レギュラーシーズンも毎試合、毎試合死ぬ気でマウンドに上がってきたので、その気持ちがそれ以上に上がることはない。いつも言っているように最後のつもりでマウンドに上がってきた」。

 この日、大勢のファンに見送られて広島をたった。「一生懸命投げるだけ。個人的なことを抜きとしてどれだけ粘り強く試合を作って、チームの勝利に貢献できる投球をするか。何を変えるということはない」。黒田流を最後まで貫く。それが最高の恩返しとなる。【前原淳】