サヨナラ満弾で王手! 「SMBC 日本シリーズ2016」第5戦は、1-1の9回2死満塁から、日本ハム西川遥輝外野手(24)が劇的なサヨナラ満塁本塁打を放ち、勝負を決めた。広島の守護神中崎から右翼スタンドに運び、日本シリーズでのサヨナラ満塁本塁打は92年杉浦(ヤクルト)以来、史上2人目。対戦成績3勝2敗で10年ぶりの日本一に王手をかけ、マツダスタジアムに舞台を移し、明日29日の第6戦を迎える。

 クールなイケメンが我を忘れ、絶叫した。「興奮して、叫びすぎて、のどがかれてしまいそう」。9回2死満塁。西川が衝撃のラストシーンを描いた。右中間スタンドへ突き刺さる、日本シリーズ史上2本目のサヨナラグランドスラム。「頼むからいってくれと思った。自分にとっても、ファンのみなさんにとっても、最高の形になった」。今季本拠地最終戦。4万人が、ベンチが、総立ちになった。指揮官の目に、涙がたまった。

 直球に張った。「四球でも終わり。絶対に真っすぐで勝負してくると思った」。直前には岡が死球を受け、両軍に不穏な空気が漂った。「燃えるものがありました」。心は熱くなったが、頭は冷静だった。代打の切り札・矢野と食事に行く機会も多い。狙い球、心構え、取り組み…。酒の“つまみ”は、いつも野球談議だった。先輩の教えが、極限状態の自分を後押しした。2球目、高めに浮いた狙い通りのストレート。迷いなく振り切った。

 背水の覚悟で臨んだ今季もつまずいた。調子の上がらなかったシーズン序盤、追い打ちをかけるように左肩にケガを負った。故障を悟られないように打席に立ったが、スイング時の痛みがこたえるため、一振りで仕留める確実性を求めるようになった。ケガの功名だった。逆方向へ鋭い打球が飛ぶようになり、見極めての四球も増えた。終わってみれば、リーグ2位の打率3割1分4厘。「長打よりも塁に出ること」。出塁とともに俊足も生きた。1番打者として、チームの欠かせないピースになった。

 6月12日阪神戦以来の1発。4カ月ぶりの感触が、さらなる飛躍を予感させる。栗山監督は期待した。「野球の神様は、ちゃんと見ててくれる。あれ(長打)とのミックスが来年必要になる」。確実性と長打力との融合。西川も「やっていることを継続していくことも大事」。日本一を決める頂上決戦の舞台で、進むべき道が照らされた。

 本拠地3連勝で、王手をかけた。西川は「早く決めるにこしたことはないです」。1週間前は、悔しさだけを残した敵地・広島。だが情勢は変わった。明日、一気に決める。【本間翼】

 ▼西川が満塁サヨナラ本塁打。シリーズのサヨナラ本塁打は14年第4戦中村(ソフトバンク)以来15人、16度目。日本ハムでは東映時代の62年第5戦岩下に次いで2人目。満塁サヨナラ本塁打は92年第1戦杉浦(ヤクルト)以来、24年ぶり史上2人目の劇的な1発だ。今季の西川は公式戦で5本塁打だけ。その年の公式戦で5本塁打以下の選手がサヨナラ本塁打は58年第5戦稲尾(西鉄=4本)62年第5戦岩下(4本)83年第5戦クルーズ(巨人=4本)に次いで4人目になる。また、日本ハムは第3戦もサヨナラ勝ち。1シリーズで2度のサヨナラ勝ちは83年巨人、92年ヤクルト、03年阪神に次いで4度目。パ・リーグのチームでは初めてだ。

 ▼シリーズの満塁本塁打は05年第3戦福浦(ロッテ)以来11年ぶり18人、18本目。日本ハムでは初めて。