巨人高橋由伸監督(41)が来季構想で4番候補に坂本勇人内野手(27)を挙げた。宮崎秋季キャンプの8日、打線のど真ん中に今季首位打者に輝いた坂本を据える可能性を示した。昨季は4番を経験したが、シーズンを通した起用はまだない。この日は自身初のゴールデングラブ賞にも輝き、進化を遂げた若き主将を名実ともに名門の中心に置ければ、3年ぶりのリーグ優勝を目指す来季の戦いで大きな決断となる。

 高橋監督が坂本が名門の金看板を担えるまでに成長したことを認めた証しだった。指揮官は若手の鍛錬の場、宮崎で来季構想を練っていた。補強の最中で「どういう陣容になるかによる」と前置きした上で「(坂本)勇人が4番の可能性は十分にある」と候補の1人であることを明言した。

 昨年4月11日のヤクルト戦で第82代4番に座った。「高校以来。ビックリした。4番目に打つつもりで」。当時は捕手に緊急復帰した阿部の負担軽減や、主力の不振などが重なり、代役の色が強く、坂本も強く意識しなかった。48試合座ったが、打率2割7分2厘、5本塁打、28打点と数字を残せなかった。今季から就任した高橋監督も昨季を受けて「外国人か阿部か長野と考えていた。坂本は考えていなかった」と選択肢になかった。

 だが今季は首位打者に輝き、23本塁打、75打点と3部門で高い成績を残した。10年目の脱皮を見届け「今年はチームで一番打った。本塁打は(10年の31本に)足りなかったけど、キャリアハイといえる。来年は4番の候補になる」と有資格者に繰り上がった。4番坂本が実現するためには、さらなる成長と周囲の状況も絡み合う。「本来は4番タイプではない。もう少し本塁打がほしい」と10年級の長打力を求めている。また坂本の定位置だった1、3番を任せられる選手が固定できることも重要だ。周りを固められれば、満を持してど真ん中に置くことができる。

 巨人の4番は動かざるポジションで重責を担う。長嶋、王、原、松井らの面々が並び、高橋監督自身も系譜を継ぎ、近年は阿部が務めてきた。指揮官は4番も含め、レギュラーは代えが利かない存在であることを求める。この日、晴れてゴールデングラブ賞に輝いた若き主将を「打つも守るもすべてレベルアップして、高いレベルでやれた証拠」と認めた。来季はさらなる高みを目指して上ることになる。【広重竜太郎】

 ◆巨人の4番打者 今季の4番は開幕戦のギャレットから始まり、合計5人を起用。最多は阿部の52試合で、5人合わせて打率2割8分4厘、17本塁打、69打点。他のセ・リーグ5球団の4番打者と成績を比較すると、打率が4位、本塁打が4位、打点が5位で打撃3部門はすべてBクラス。特に、打点は昨年も67点しかなく、4番の打点が15、16年と続けて70点未満は両リーグで巨人だけ。

 ◆坂本の先発打順 今季は先発した131試合すべて3番で出場。プロ通算では1番から9番まで全打順を経験しており、4番は15年に48試合出場。15年4月11日ヤクルト戦で巨人82代目の4番打者となり、4番での成績は48試合で打率2割7分2厘、5本塁打、28打点だった。