日本一に貢献したい! 広島は8日、ドラフト1位指名した慶大・加藤拓也投手(21)と都内で交渉。契約金1億円プラス出来高払い5000万円、年俸1500万円の最高条件で仮契約を結んだ。加藤は「与えられたところで投げられるように。今年逃した日本一に貢献したい」と早くもフル回転モードだ。(金額は推定)

 カメラマンからポーズ用に「目標か何か、ひと言」と色紙を渡された加藤は戸惑った。慶応ボーイのイメージとは違う素朴な様子でしばらく考え込んだ後で「じゃあ、これでいきますかね…」と書き込んだ文字はズバリ「日本一」。チームが逃したばかりの大目標をきっちり書き込んだ。

 都内ホテルで午後4時から苑田スカウト統括部長、高山、尾形の両スカウトと話し合った加藤。仮契約を終えた後、学生服姿も初々しく、言葉を選びながら話した。

 「しっかり練習して、ケガなく1年間戦って、優勝に貢献できるようにやりたい。不安もあるけれど自分の力がどれだけ通用するか楽しみ。カープはファンと一体となった活気のあるチームだと思います」

 最速153キロの真っすぐを軸にスライダー、カーブ、そして大きな武器のフォークを駆使。東京6大学のマウンドに君臨した。野球だけでなく、慶大の大久保秀明監督によると「頭が良いですね。経済学部での成績もよく、すでに卒業に必要な単位もほとんど取れている」という。

 力強い真っすぐ、クレバーさとともに持ち合わせるのがタフなハートだ。球界で慶大OBといえば巨人高橋監督が浮かぶが「面識はないので。特に意識するということはありません。それに誰々の前だから、というのがないですから」とさらりと言ってのけた。

 苑田統括部長が「先発なら3、4番手を争う立場になると思うがどこでもやれるタイプ」というように、即戦力としての期待は当然として、先発、中継ぎ、あるいは抑えの働き場所も来季のチーム状況に応じて決まる方向。加藤も「どこでも与えられたところで投げられるように」と言い切る。黒田が引退し、投手層が薄くなったがルーキーが働けばリーグ連覇、そして日本一への道は開けてくる。【編集委員・高原寿夫】

 ◆加藤拓也(かとう・たくや)1994年(平6)12月31日、東京出身。慶応-慶大。東京6大学リーグでは1年秋に150キロをマーク。今秋の東大戦でノーヒットノーランを達成。2度の最優秀防御率を獲得。足を高く上げるフォームが特徴的で「慶大のライアン」の異名も。座右の銘は「偶然は準備のできていない人を助けない」。175センチ、90キロ。右投げ右打ち。