侍ジャパンへ「3つの提言」を送る。メキシコ、オランダとの強化試合を終え、いよいよ来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向かう。小久保裕紀監督(45)が「勝ちにこだわる」と臨んだ4連戦は3勝1敗も、相手に主導権を渡す苦しい展開が続いた。昨年のプレミア12準決勝、韓国戦の逆転負けから1年。強い日本を印象づけて本番へ-の思惑は崩れた。今回の強化合宿、強化試合から浮かび上がってきたポイントは「大谷の起用法」「ベンチワーク」「メンバー編成」の3点。課題を克服すれば、世界一の奪還が見えてくる。

<提言2:ベンチワーク>

 実戦感覚の鋭いコーチを最前線に押し出すベンチ体制を整えるべきだ。今回の投手コーチは権藤コーチ1人だけ。試合中のブルペンには村田善バッテリーコーチが入った。WBC本番でのカギを握る投手部門。この担務の入れ替えが良策と考える。

 NPB関係者によると、WBCでのコーチングスタッフは、今回と同様の監督+6人になる可能性が高い。限られた人数の中で、いかに効果的な配置を行うかが重要になる。その顕著な例が12日オランダ戦だった。初のタイブレークに突入し、「ベンチにはバタバタした感じはあった」(チーム関係者)という。日本の守りから始まったこともあり、ブルペンだけでなく守備陣形やサインの指示にも慌ただしさが出た。

 村田善コーチは巨人でも同職の現役コーチ。前回13年大会ではスコアラーも務めており、小久保監督に配球や守備隊形などスムーズな助言が可能だ。一方、権藤投手コーチは現在現場からは離れているが、投手の状態把握に的確な判断を下すことができる。本番では球数制限もある。ブルペンから、試合状況に応じてベンチに電話をかける、通常とは逆パターンの指示系統も、十分機能するだろう。

 強化試合4戦は、あらかじめ基本的な登板順は決められていた。権藤コーチも「(ブルペンとの連携は)スムーズだったし、特に問題はなかった」と話したが、刻一刻と変化するグラウンドにベンチが迅速かつ、的確に対応できなければ、後手を招き、致命傷になりかねない。

 12日の同戦で一挙6点を奪った5回の攻撃では、一塁からの長駆生還が2度あった。三塁コーチは、巨人で同じポジションを務める大西外野守備走塁コーチだった。選手だけでなく、コーチ陣の配置にも、実戦感覚は不可欠だ。【佐竹実】