被災地へ届け、人生初の予告本塁打だ! 巨人長野久義外野手(31)が18日、4月に起こった熊本地震の被災地を激励に訪れた。熊本・南阿蘇村を訪問し、仮設住宅で暮らす被災者を激励。サプライズで登場した南阿蘇中学では、全校生徒の前で、来季4月18日に熊本で開催されるヤクルト戦で、本塁打を放つことを約束した。言葉よりも行動で示す九州男児が「今まで1度もない」という初の有言実行弾を誓った。

 約束の予行演習は、左翼方向への3発だった。試合と同じ7番のユニホームを着た長野が、握ったのは木製バットではなく金属バット、打った球は硬球ではなく軟球だった。南阿蘇中学野球部の練習に飛び入り参加。中学生の投げた球を振り抜いた打球は、校庭を越え土手まで飛んだ。3度の本塁打は来年4月18日の巨人-ヤクルト戦での1発を予感させた。練習の直前、261人の全校生徒の前で宣言していた。

 「来年熊本で巨人の試合があります。みんな来て下さい。頑張ってホームランを打ちますから」

 社会人野球・ホンダ時代の先輩である坂本保さん(42)に協力してもらい被災地を訪問した。12年に訪れた4年前とは、明らかに違った光景が飛び込んできた。亀裂した道路、ブルーシートを屋根に覆う家々、崖崩れで山肌がはがれた山々…。まだくっきりと残る地震の爪痕を目の当たりにして「思っている以上に大変で、僕にできることがあれば少しでも力になりたい」と言ったのは本音だ。

 佐賀生まれで、高校まで福岡で育った九州男児。同じ九州の火の国で起こった残酷な光景の中で光も見た。仮設住宅での暮らしが続く被災者のもとを訪れたとき、笑顔で出迎え、喜ぶ被災者の姿があった。記念撮影のときに言われた。「今日は今までで一番いい日だぁ」。4月14日の地震から219日目。心から出たその言葉を聞き、長野は「ユニホームを着てきてよかったです」。ジャージー姿ではなく試合と同じ姿に大きな意味があった。

 今季、九州で驚異的な打率を誇っている。6月のヤフオクドームでのソフトバンク3連戦。長野は12打数6安打の打率は5割。しっかりと本塁打も放っている。「僕も元気をいっぱいもらった」。約束の1発は、必ず打つ。【栗田成芳】

 ◆予告本塁打 1932年のワールドシリーズ第3戦、ベーブ・ルースが中堅方向を指し、本塁打を放ったとされる。05年5月3日、新庄(日本ハム)は7回2死、バックネット裏の三宅スコアラー(阪神)に「ホームラン打つから」と声を掛けた。三井(西武)の初球を左中間スタンドへ運び「阪神の三宅スコアラーが困っちゃってる打法!!」と命名した。13年10月4日の阪神戦前、バレンティン(ヤクルト)は右から左に吹く風を見て「トゥデイ、チャンス。サヨナラね。ミヤモト、プレゼンツ」。引退試合の宮本に贈る60号を予告していた。

 ◆巨人の今季の熊本、鹿児島開催中止の経緯 4月19日に熊本(藤崎台県営野球場)、20日に鹿児島(県立鴨池野球場)で中日2連戦を組んでいたが、14日に熊本で地震が発生。直後から球団職員を派遣し、開催実施に向け調査を行っていたが、16日未明に震度6強の激しい地震が連続して発生し、安全確保や移動手段の手配も厳しくなり、中止を決定した。同カードは9月27、28日に東京ドームで代替開催となった。