日本ハム斎藤佑樹投手(28)と有原航平投手(24)が、機転の利いた行動で人命を救助した。22日、応援大使を務める北海道・美瑛町を訪問。同町の名所「青い池」を訪れる直前、対向車線を走っていた車が雪道にスリップして道脇に転落。ひっくり返った車体の中にいた男性運転手を、2人が中心になり、助け出した。幸い運転手に大きなケガはなかった。楽しみにしていた観光名所に目をくれず、とっさの判断で救い出した。

 信じられない光景に出くわした。美瑛町の観光名所「青い池」に向かい、斎藤と有原らが乗ったジャンボタクシーは道道966号を走っていた。「楽しみですね」とワクワクしていた2人が、憧れの地に到着する直前だった。衝撃的なシーンを目の当たりにした。対向車線を走っていた車が雪道にスリップし、そのまま路肩に転落。「びっくりした」という斎藤と有原だが、すぐさま乗っていた車から飛び出した。

 楽しみにしていた「青い池」は、すぐ先だったが、そんなことは言っていられない。一目散に事故現場へ。スリップして蛇行運転となった事故車は、左側の道脇に転落後、勢い余って前方に1回転し、ひっくり返っていた。まずは車内にいる運転していた男性の状況を確認。幸い大きなケガはなく、助けを呼ぶ電話をかけていた。斎藤がドアを外から開け、有原も車内からの救出を手伝った。「良かった。無事で良かった」と、2人は声をそろえた。

 危機一髪だった。事故が起きたのは午後3時ごろ。気温は氷点下0・6度、雪が積もった道路は滑りやすくなっていた。雪国の運転経験があっても、根雪になったばかりのこの時期は、雪道に慣れていないため、スリップする危険性が高まる。車が1回転した事故に、斎藤は「あんなの見たことない」。もし、事故車が反対車線へ飛び出してきていたら…、もし斎藤らが通りかからず事故車に誰も気がつかなかったら…、対応の遅れが、予期せぬ結果を生んだ可能性もある。その中で冷静で的確な行動だった。

 「人助け」の後は、念願の「青い池」を鑑賞した。ただ、冬場ということもあり、池はほとんど白く凍っていた。斎藤は「青くなかったです」と苦笑いも「でも、きれいでした」と堪能。この日の行程の最後となった約400人の美瑛町民が集まったトークショーでは「みなさん、本当に気をつけてほしい」と、あらためて雪国の運転の怖さを訴えた。【木下大輔】

<主な球界のお手柄>

 ◆日本ハム柏原純一 80年6月、首都高速を走行中に衝突事故を目撃。バットでドアガラスを割り、事故車両に閉じ込められていた負傷者らを救出した。

 ◆中日山崎武司 90年12月、火事で逃げ遅れた乳幼児ら5人を救出。セ・リーグ会長から特別表彰。

 ◆ヤクルト金沢次男 92年8月、痴漢を捕まえた。犬の散歩中にOLの悲鳴を聞き、近くにいた会社員と協力。約400メートル追い、捕まえた。

 ◆近鉄酒井弘樹 00年1月、サイパンでの自主トレ中にプールでおぼれている少女を発見。とっさに飛び込み、救出した。

 ◆台湾プロ野球嘉南勇士・渡辺久信 00年、台湾で大雨による洪水が発生。冠水した道路で流される寸前だった女性を抱えて救助。自身の胸まで水が押し寄せていた。

 ◆横浜欠端光則広報 08年12月、関内駅のホームから転落した女性を線路に飛び降りて救出。JR東日本から感謝状を受けた。

 ◆ロッテ西岡剛と早坂圭介 08年12月、東京・西麻布の交差点でタクシー料金を支払わずに逃走する若い男性を発見。俊足を生かして取り押さえた。