忍者の国からてっぺんを目指す。楽天から10位指名された西口直人投手(20=甲賀健康医療専門学校)が24日、新人選手とともにコボスタ宮城の施設を見学した。学校の所在地である滋賀・甲賀市は忍者の甲賀流で有名。前日23日のファン感謝祭では、お披露目の際に忍者を広めたいと宣言。今秋ドラフトで全体最後(育成枠をのぞく)の87番目に指名された男が、必殺技の「くないストレート」と「手裏剣カーブ」を武器に天下を取る。

 ニンニン、忍者西口くんでござる。コボスタ宮城の観覧車に乗り終わると慣れた手つきでポーズを取った。「右手は指1本、左手は2本が正しいらしい」と忍者が忍術を使う前に指で作る“印”を披露した。

 甲賀の誇りを胸に仙台へとやってきた。出身校は「忍者ハットリくん」のケムマキと同じ甲賀市。前日に行われたファン感謝祭では2万616人の前で「甲賀と言えば忍者が有名。忍者を広められるようにがんばります」と胸を張った。

 誰にも負けない武器がある。最速149キロの「くないストレート」と内角をえぐるように曲がる「手裏剣カーブ」だ。忍者の兵器よろしく、一撃必殺。「くない」は「直球と分かっていても空振りを奪う」と阪神藤川の直球のように初速と終速の差が少なく、浮き上がるように感じる。

 「手裏剣」は110キロ台だが、「調子が良い時は打者の腰が引ける」とぶつかるような軌道から手元で消えるように一気に曲がる。その他、スライダー、チェンジアップも駆使する。

 秘伝の巻も手に入れた。大阪・八尾市で同郷の桑田真澄氏(48)の映像だ。YouTubeなどで研究。「合理的で体のバランスで投げている。ケガをしない投球術」と体の使い方にほれ込んだ。常に意識し、「フィールディングも、けん制も自信がある」としなやかな動きを習得した。

 ドラフト指名は全球団最後の87番目。隠れるようにプロの扉をたたいたのも甲賀らしい。同校OBは元レンジャーズ建山義紀氏(40)や阪神でF1セブンでならした藤本敦士氏(39)と個性派ぞろい。西口は「ファンを魅了できるような真っすぐを投げたい」と意気込む。愛称は「ニンニンでお願いします」と希望。不敵に笑い、仙台からドロンと姿を消した。【島根純】

 ◆西口直人(にしぐち・なおと)1996年(平8)11月14日、大阪・八尾市生まれ。小学2年から野球を始め、4年から投手。山本高から甲賀健康医療専門学校に進学した。趣味はカラオケで、得意な歌手は尾崎豊。好きな食べ物はドリア。理想の女性は戸田恵梨香。183センチ、80キロ。背番号62。契約金2500万円、年俸600万円(金額は推定)。右投げ右打ち。血液型B。

 ◆ドラフトしんがり指名メモ 最後に指名されて活躍した選手としては、最近では田畑一也(現巨人コーチ)、福浦和也(ロッテ)らがいる。田畑は91年にダイエー(現ソフトバンク)10位でプロ入り。ヤクルト移籍後に「野村再生工場」で主力投手となり、96年に12勝、97年に15勝を挙げた。実働9年で通算37勝36敗1セーブ。福浦は93年に7位で入団。01年に首位打者に輝くなど、「幕張の安打製造機」と呼ばれ、通算1932安打、117本塁打。2000本安打まであと68本に迫っている。