【カロリナ(米自治領プエルトリコ)9日(日本時間10日)=為田聡史】プエルトリコのウインターリーグに参戦中のソフトバンク松坂大輔投手(36)が自身の「現在地」を示した。国内復帰後の2年間はリハビリに明け暮れる苦悩の日々を強いられた。再起をかける怪物が陽気でラテンの雰囲気が漂う地で胸の内に秘める思いを自らの言葉で明かした。

 プエルトリコの強い日差しが徐々に夕日へと変わっていく。心地よい潮風を受けても松坂の心の芯はびくともしなかった。ベテランとして異例のウインターリーグ参戦は「楽しむつもりで来ているわけではない。来年、どうにかしなきゃいけない」と、ちゅうちょなくはき出した。

 どうにかしなきゃいけない、どうにかしたい。どちらが本意なのか? その質問には「んー、どうなんだろう…」と、しばらく沈黙して思考を巡らせたが、すぐに答えを発しようとはしなかった。

 15年シーズンを前に米メジャーから国内復帰を決断した。周囲の熱視線は容赦がない。のし掛かるプレッシャーは想像を絶する。同4月に右肩の筋疲労で無期限ノースローに入った。5月下旬に2軍戦で復帰するも一進一退が続き、8月18日に右肩の手術を受けた。今季はキャンプインからブルペン入りし、順調かと思われたが、厳しい現実だけを突きつけられた。「リハビリがうまくいってなくて、ストレスが強かった」。他人に責任を押しつけようとはしない。だから、他言することなく、ひたすら耐え続けてきた。

 この日は、遠投、強めのキャッチボール、ショートダッシュで調整。汗を飛び散らせながら全身を目いっぱいに使い躍動感が戻ってきた。次回登板は13日(日本時間14日)に予定されている。「ここの雰囲気に流されないようにしている。みんながみんな、危機感を持ってやっているかと言えば、そうは見えない。ラテン系の気質もある。ただ悲壮感はないですよ」と静かにうなずいた。

 地球のほぼ真裏に位置するプエルトリコでベテランが、明確な意思を持って野球と向き合っている。「そのうち、そうしているうちに『野球が楽しいな』という思いにつなげられるように、ここに来てやっている。1日でも早くそうなりたい」と夕日が差し込むグラウンドに視線をやった。

 契約最終年の来季のキャンプインまで2カ月足らずと迫っている。「来年、結果を出したい気持ちはあるけど、それを言葉にしたくない。常にそういう思いでプレーして、練習している。みんな結果を出したい。そう思っていない選手は1人もいない」。カリブ海で夕日を浴びる怪物が、日いづる国で再び上昇する。

<16年ソフトバンク松坂の実戦>

 ◆9月25日ウエスタン・リーグ阪神戦 2イニングを投げ、1軍昇格にGOサインが出た。同22日の3軍戦(社会人ホンダ熊本戦)から中2日での登板。9月に入って調子を上げていたが、10日の同リーグ・オリックス戦で先発し、右臀部(でんぶ)に張りを訴えスローダウンしていた。

 ◆10月2日楽天戦 今季唯一の公式戦登板。8回に登板し、いきなり4連続四死球と大乱調。打者10人に3安打5失点。1イニングに39球を費やした。

 ◆12月3日カグアス戦 プエルトリコ・ウインターリーグでカロリナの先発として初登板。4回を1安打2失点。2三振も6四球で敗戦投手になった。最速143キロ。投球フォームやベースカバーなどの動きに躍動感が出てきた。