巨人高橋新監督の船出となった今季は、いきなり厳しい現実を突きつけられた。「一新」をスローガンに掲げたものの、世代交代がスムーズには進まなかった。

 長距離砲と期待した岡本はオープン戦で脱落し、即戦力ルーキーのドラフト1位桜井は1試合の登板で右肘を痛めた。レギュラーで活躍した20代の選手は、実質坂本のみ。シーズン終了後、高橋監督は「台頭というか新しい選手がレギュラーをつかむ。チームとして大きな課題」と直視した。

 早急に個々のレベルアップに着手した。秋季キャンプには育成選手も含めた若手で臨み、対外試合も組んで経験値を積ませた。台湾、プエルトリコのウインターリーグには計11人を派遣した。オフにまいた種が芽を出せるよう、2月の春季キャンプにも若手の1軍メンバー抜てきもあり得る。

 世代交代は滞ったにもかかわらずリーグ2位につけられたのは、坂本の覚醒によるところが大きい。2月の春季キャンプで臨時コーチの松井秀喜氏から教わった、右足に体重をためて打ちにいく新打法を習得し、打率3割4分4厘で初の首位打者を手にした。ゴールデングラブ賞にベストナインと、リーグを代表する遊撃手に成長したのは、チームの将来にプラスとなる。

 オフには日本ハムから陽岱鋼、DeNAから山口俊、ソフトバンクから森福と、史上初の1シーズンでのFA3選手獲得に成功。元楽天のケーシー・マギー内野手(34=タイガース)に抑え候補の最速164キロ右腕・アルキメデス・カミネロ投手(29=マリナーズ)の加入も決まり、投打ともに選手層の厚みは増した。あとは今季のように、村田や阿部らベテラン勢が健在ぶりを示せるかどうか。若手とベテランと新戦力が融合し、2年目の若き指揮官が思うままにタクトを振るえれば、3年ぶりのリーグ制覇はもちろん、5年ぶりの日本一も見えてくる。【巨人担当=浜本卓也】