【グアム(米国)17日=為田聡史】勝つためには、巨人を愛すること-。巨人小林誠司捕手(27)が阿部慎之助内野手(37)から“必勝ヘア”を伝授された。合同での自主トレと寝食をともにする後輩の共通テーマは「チームが勝つ」。宿舎で小林が持参したバリカンで阿部自身も若き日に敢行した「GIカット」に仕上げた。罰ゲームではない。真剣なまなざしで後輩にジャイアンツ愛を注入した。

 阿部が正捕手筆頭候補の小林に“ジャイアンツ愛”を伝授した。宿舎での夕食後。小林が持参したバリカンを阿部に手渡した。出国前に9ミリで刈りそろえた髪が、ちょうど伸びてきていた。「お願いします」。静かにうなずく阿部。イメージを確認すると一気にバリカンを入れた。下半分を5厘で刈り込み上半分は9ミリでそろえて「GIカット」に仕立てた。

 阿部 「ジャイアンツ愛カット=(GIカット)」だな。チームが勝つためには強くならないといけない。強く、強く。まずは見た目からでも強そうにならないと。

 部屋の鏡で新ヘアをチェックした小林もストレートに思いを受け止めた。

 小林 似合っていますか? 自分では気に入っています。まだまだ僕は弱い。チームが勝つためには自分自身が強くならないといけない。

 開幕スタメンマスクを任されたプロ1年目から阿部はチームが勝利することだけを考えてプレーを続けてきた。「勝てばみんなで喜べるし、負けたら何も残らない。自分が現役の間だけじゃなくて、これから先もずっとジャイアンツは勝たないといけないチームだと思っている」と熱っぽく言った。かつては坂本、長野ら後輩を同行させたグアムの地で小林にも「ジャイアンツ愛」を伝えた。

 小林の顔は日を追うごとに精悍(せいかん)さが増している。炎天下、ノックでは声を張り上げ、食事の準備、配膳も機敏にこなす。「グアムに来てからは、緊張しっぱなしです。ただ、この環境を求めて自分からお願いしましたし、充実しています。結果を出して阿部さんに恩返ししたいです」と小林。勝つために強くなる。グアムでの自主トレは今日18日からが最終クール(3勤1休)。愛の特訓は大詰めに入る。

 ◆GIジョー 米軍兵士を表す一般的な呼称。GIだけでも米兵を意味する俗称として通じる。1964年からバービー人形の男児版として、関節が動く着せ替え人形が発売され、日本でも人気を集めた。

<あふれるジャイアンツ愛アラカルト>

 ◆語源 02年、就任した原監督がチームの団結を訴え「ジャイアンツ愛」という言葉を重用した。個性派集団がまとまり、日本一に輝いた。

 ◆闘魂こめて 02年の納会で選手会長が松井から高橋由(現監督)に交代。ヤンキース移籍の松井が「みんなでフォローしてより良いジャイアンツをつくっていってください。僕も向こうから応援しています」と話すと高橋由も「皆さんと一緒に優勝を目指して頑張ります」とあいさつし、2人は壇上で肩を組んで「闘魂こめて」を熱唱。

 ◆タイトルをシェア 12年、坂本は最終戦で3安打を放ち、長野の最多安打に並んだ。並ばれた長野はガッツポーズで喜び、直後に回ってきた打席も代打を送られてシーズン最多安打のダブル受賞が確定。坂本を「ベンチで喜んでくれている姿を見て、うれしさがこみ上げてきた」と感動させた。

 ◆橙魂カラー 大竹寛は移籍直後に子供服を買いに海外ブランド「GAP」に行くと、Gと印字された服を前に、自然とオレンジカラーに手が伸びて購入。また移籍後から登場曲は名前にもかけてKANの「愛は勝つ」。