ヤクルトのドラフト2位、星知弥投手(22=明大)が、指先を研ぎ澄まして開幕1軍入りをつかむ。新人合同自主トレ打ち上げ前日の28日、同期が投球練習を行う中で、星は体力強化中心のメニュー。1度もブルペン入りせず1軍キャンプに参加する。「指先の感覚を大切にしながら投げて、開幕1軍に残れるようアピールしたい」。投げずに学んだ指先の感覚の大切さを、今後に生かすつもりだ。

 紙ヤスリが、考え方を変えた。新人合同自主トレ期間中は、今季から球団が導入したテーマごとに1時間の講義を、1日2コマ受講。17日の「独自の物差しをつくる」というテーマの講義で、わずかな感覚の違いが投球に影響することを再確認した。講師を務めたJOCのスタッフが、粒子の異なる紙ヤスリ16枚を準備。目隠しして無作為に引いていき、目の粗い順に並べるゲームに挑んだ。頼りは指先の感触だけ。星は「10枚目あたりまで順調だったけど、だんだん違いがわからなくなった」。結果は12枚正解。ドラフト1位の寺島成輝投手(18=履正社)も含めた新人7人のうち、全問正解者はいなかった。

 漆塗りの職人は、指先の感覚だけで塗られた厚さの違いを判別し、最高の器に仕上げる話も聞いた。「(紙ヤスリは)野球選手向けに用意してくれたと聞いた。細かい部分まで感じながらやったほうがいいと思った」。キャッチボールや遠投から、体の動きや球筋だけではなく、指に残る感触を強く意識し始めた。「聞いたことを、どう野球に生かすかが重要」。最速156キロ右腕は、投球を披露する日を心待ちにしていた。【鹿野雄太】