日がたつにつれて阪神の姿が見えてくる。この日から投内連係を開始し、チームの懸案が浮き彫りになった。「一塁問題」である。この守備位置に就いたのは中谷、今成、板山だった。

 昨季限りで退団したゴメスのポジションだったが、適役不在の状態が、今もって続く。「重量感」に欠けるのだ。もちろん、中谷らにとってはチャンスだが、近年の開幕スタメンを見てもブラゼルや新井良らのようにスラッガータイプが座るのが収まりがいい。今年の顔ぶれを見渡して、単刀直入に言えば、昨季11本塁打の原口文仁は一塁の練習も始めていくべきだろう。

 日刊スポーツの新春インタビューでも、金本監督は「原口が捕手をできない場合に一塁という手もある」と話していた。高代ヘッドコーチは「原口がポイントになる。本人は捕手をやりたいということだから」と説明する。首脳陣は意気込みを買い、マスクをかぶらせる。岡崎、坂本、梅野と激しく正捕手を競うなか、ある事実に行き当たった。

 宜野座で、もっとも目立たないのは陸上競技場の第2コーナー付近だ。ここで最近2日間、4人の捕手が分かれて特守を行った。

 3日→原口・岡崎

 4日→梅野・坂本

 矢野燿大作戦兼バッテリーコーチがノックを打ち、ワンバウンド処理の捕球を行う。二塁送球も繰り返したが、原口だけがノースローだった。古傷の右肩に不安があるなか、昨秋から地道にインナーマッスルを鍛え、着実に回復。1月の自主トレでも力強く投げた。この日もキャッチボールなどを行ったが、いまも慎重を期す。矢野コーチも「やろうと思えばできるけど、あえてブレーキをかけている。第2クールからは普通にやらせる」と話した。

 原口の思いをくんだ正捕手争いを続けつつ、勝てる態勢を作る危機管理も必要だろう。その1つが「一塁原口」だ。長打コースの一塁線を守り、野手の送球を捕り、バント処理の重責もあり、守備力が問われるポジションだ。昨季は9試合守ったが、キャンプ中に力量を磨く意義は大きい。少なくとも、15年のように、二塁挑戦中だった西岡に、キャンプ最終日の三塁転向を講じたドタバタ劇だけは避けたい。

 ◆酒井俊作(さかい・しゅんさく)1979年(昭54)、鹿児島県生まれの京都市育ち。早大大学院から03年に入社し、阪神担当で2度の優勝を見届ける。広島担当3年間をへて再び虎番へ。昨年11月から遊軍。今年でプロ野球取材15年目に入る。趣味は韓流ドラマ、温泉巡り。

 ◆ツイッターのアカウントは @shunsakai89