広島恒例の強化メニューがロングティー。ローテーション打撃が終わった後に、1箱約200球がなくなるまで打ち続ける。中盤から選手のうなり声が響く。声にならない声から「オラッ」、「クソッ」など、腹の底から出る声だ。スイングが緩くなると、打撃コーチ陣からすかさず声が飛ぶ。終わるとその場に倒れ込む選手も少なくない。

 この日は今キャンプ初のロングティーが行われた。誰よりも大きな声を出して打っていたのが、鈴木誠也外野手(22)だった。残りが半分になると「あと半分!」と言いながら打ち、苦しくなると「限界突破!」、「ここからや!」と叫びながらバットを振っていた。自分と向き合う、殺気立つような雰囲気を醸し出していた。

 そしてラスト10球となると「10割への道!」と言って打った。契約更改の場で目標を問われ「10割200本、1000打点」と言った男。当然、無理だとは分かっている。だが、鈴木にとっては100%の冗談ではないのだ。その言葉に周りも乗せられ、快音が響く。

 鈴木らしさは最後まで出た。ヘロヘロになって打ったラスト1球を打ち損じると間髪入れずに「もう一丁!」と言い放った。自分の惰性は許さない。ド真面目に「10割への道」を歩んでいるのだ。【広島担当 池本泰尚】