糸井桜が満開の超見ごろを迎えた。阪神にFA移籍した糸井嘉男外野手(35)が最後のオープン戦で移籍後初の適時打&初マルチ安打をマークした。3番中堅で出場し、4回に鋭い右前打。3点を追う6回には2死二塁から右前適時打を放った。1月の右膝関節炎から慎重に調整を進め、すでに全開モード。万全の状態で3月31日の開幕を迎える。

 糸井が放った打球はふわりと舞い上がった。4回に右前打を放ち、迎えた6回だ。2死二塁、カウント1-2からオリックス西の内角スライダーを強引に押し込んだ。ボールは背走する二塁手西野の伸ばしたグラブをはじいてライト方向へコロコロ…。二塁走者の高山が悠々と生還した。

 「ボール気味の球に手を出してしまいましたが、落ちてくれてラッキーでした」

 確かに難しいボールだったが、チャンスを確実にものにするところはさすが。技とパワーで阪神移籍後、初めてのタイムリーをたたき出した。

 守備、走塁でも準備OKをアピールした。1回無死一塁では2番西野のセンター前に落ちそうな当たりを猛然と突っ込んでスライディングキャッチ。1本目の安打を放った4回には、4番福留の痛烈な右前打をジャンプでかわし、そこからトップスピード。一塁から三塁へ激走した。キャンプを別メニューで過ごした右膝関節炎の影響はみじんも感じさせなかった。

 オープン戦はこれで9試合に出場した。虎デビュー前日の14日、京セラドーム大阪でのオリックス戦では、試合前の練習中に昨季まで所属した古巣のベンチを“襲撃”。T-岡田ら旧知の仲間に「こっちの方が落ち着くわ」とジョークを飛ばしながら、「ここにずっと座っていたから」と昨季までの指定席に腰を下ろして和む姿があった。この日は古巣相手に大暴れ。すっかり「虎の糸井」になっていた。

 試合後はそれでも、なぜか深刻な表情を浮かべた。「(初タイムリーは)良かったです。まあ、不安はあるけど、100%じゃないから。う~ん、5割くらいかな…」。えっ、5割? 周囲の困り顔を見渡した糸井は「うっそー!」とニヤリ。走攻守にトークも、満開の見ごろを迎えた。【桝井聡】