すがすがしい晴天下のヒーローインタビュー。ロッテ涌井秀章投手(30)は今季3度目の先発での初勝利を「ファンの皆さんよりも、自分が待ってました」と言い、浜風を受けた。ZOZOマリンの風速計はこの日、常時15メートル前後を記録。台風ばりの強風が背中から吹き付けた。「ここはストレートが風で浮く特性がある。縦の変化球はワンバンが増える。投げるポイントを変えながらいきました」。与四球はたったの1。ストライクを取ることすら難しい環境を逆手に取った。毎回の8奪三振で、西武打線に三塁を踏ませなかった。

 完封もいける。そんな空気が漂う7回終了後、降板を申し入れた。「欲張るといいことないんで」とそっけなかったが、英二投手コーチには伝わった。「益田に投げさせて下さいっていうメッセージなのかな」。益田は前夜、逆転2ランを浴びてセーブに失敗。伊東監督は抑え再考も示唆していた。翌日、1点リードの展開。リベンジには最高のシーンだ。「9回は益田でいくぞ」。同コーチの言葉に「あ、いいですよー」。ひょうひょうと返した。

 チームを救い、自分を救い、気落ちしていた益田をも救った。無失点リレーを完成させた後輩右腕がウイニングボールを差し出すと、笑顔で受け取った。投げるだけでなく、チーム全体に気を配る。大黒柱の役割を全うしている。涌井はお立ち台の最後を、こう締めた。「完封? 次回、乞うご期待です」。【鎌田良美】