苦しい時でも、人生初の「予告本塁打」の約束は忘れていない。巨人長野久義外野手(32)が17日、昨年4月の熊本地震で被害を受けた益城町の飯野小学校を、同県出身の立岡と訪問した。昨年11月に南阿蘇村を激励した際に今日18日のヤクルト戦での1発を誓ったが今季打率1割5分2厘、0本塁打と不振にあえぐ。昨年の巨人戦開催は震災直後で中止となり、今年が11年ぶり。被災地のエールを力に、長野が活躍を届ける。

 体育館に登場した長野は、どこか肩身が狭そうだった。小3から小6の児童約80人と校庭の仮設住宅で生活する人々らの前に置かれたパイプ椅子に、立岡と並んで座った。質疑応答では、2問目までマイクを持つのをためらった。6問目で「本塁打を打った気持ちは?」と聞かれると「すごくうれしいです」と即答した後、言葉に詰まった。「なかなか打てないけど…。明日は立岡が打つみたいなので、期待しておいてください」と苦笑いした。

 元々、ビッグマウスではない。昨年11月に被災地の南阿蘇村を訪問した際、現地の状況を目の当たりにし、自分にできることを熟考した。南阿蘇中学の生徒を前に「来年熊本で巨人の試合があります。みんな来てください。頑張ってホームランを打ちますから」と約束した。野球で喜ばせ、笑顔になってほしい。その思いから生まれたのが、人生初の予告本塁打だった。

 実現は簡単ではない。開幕から不調で打率は1割5分2厘、0本塁打。2試合連続スタメンを外れた状況で、熊本に戻ってきた。約束の言葉を軽はずみに言える状況ではなくなった。

 苦闘の背中を笑顔の子どもたちに押された。締めのあいさつでは、飯野少年野球クラブの堀太陽主将(6年)から「明日見に行くので長野選手と立岡選手の本塁打が見られるとうれしい」とお願いもされた。「パワーをもらいました。11、12月にでも来たい。それまでしっかり頑張ります。また会いましょう!」と快活に返し、ほほ笑んだ。

 交流後、報道陣からも予告本塁打について聞かれたが「明日はベンチでしっかり声を出して宗一郎(立岡)を応援します。本塁打を打つと思うので」とけむに巻いた。今の状態で、公式戦の最中で、約束はできない。だが約束を果たすために、被災地の野球ファンの前で全力を尽くすことは誓える。【浜本卓也】