敗れはしたが、意地の投球を見せた。ヤクルト山中浩史投手(31)が、7回9安打されながらも2失点と粘投。地元熊本の方言「がまだせ(頑張れ)」そのままの内容だった。打たれても、打たれても、大量失点は許さない。2点目を奪われた直後の5回2死一、三塁。巨人マギーへ攻めた。内角高め119キロの直球で三ゴロに仕留め、最少失点で切り抜けた。「5回の1点が展開的に重くなった」と反省するが、歯を食いしばった。

 特別な一戦だった。熊本地震発生から1年。マウンドに立つ意味をかみしめた。前日17日に熊本空港に到着後「あらためて自分に何ができるか考える機会になった」と思案。復興途上の町並み、スタンドに並ぶ親族や友人の顔を見て、答えは1つだった。「大げさなことは言えない。僕のプレーで何かを感じてもらえたら」。粘り強く全力で打者に挑む姿を見せ続けた。

 この日球場が大きく沸いたのは巨人立岡との同郷対決。3回にはピッチャー返しを右足に受けるなど3安打を許したが「立岡がナイスバッティングをして盛り上がって良かった。次は抑えられるように頑張ります」と笑った。打球が当たった箇所も「大丈夫ですよ」と気にせず、1万3276人、満員の観衆が喜んでくれたのがうれしかった。「シーズンは長いので反省しながらやっていきたい」。次は勝利をつかみ、熊本を元気づける。【島根純】