中日が動いて、もがいて、サヨナラ勝利をつかんだ。執念の土けむりが舞い上がった瞬間、一塁ベンチからナインが飛び出した。

 同点の9回2死二、三塁。ドラフト2位京田が放った平凡な打球を三塁鳥谷がはじいた。横目で確認する前から京田は緩めていなかった。俊足新人は頭から飛び込んだ。打点なき殊勲者は「自分の武器は足。全力疾走しました」とお立ち台で笑顔を見せた。

 いずれも得点圏打率1割台のゲレーロ、ビシエド、平田の主軸を解体。ゲレーロを先発から外し、ビシエドを来日2年目で初めての4番降格となる7番に下げた。まだ16試合目。避けたい事態だった。試合前に監督とコーチが話し合ってゲレーロ外しを決めた。勝利と、両助っ人の復調を優先する決断だった。

 森監督は「ゲレーロは悩んでいたみたいだけど、せっかくなら外そうかとなった。(京田の)次の打席で用意はさせていた。できなければ動くしかない。もっと選手が動いてくれたら、いいことがあるでしょう」と説明した。

 スマッシュヒットは今季初の「3番大島」だった。首位打者、最多安打を快走する絶好調男は8回の同点打を含む今季4度目の4安打。得点圏打率も4割5分5厘とした。「自分は何番でも関係ない。投手に申し訳ないことをしてきた。みんなが打ち出せばチームは機能してくる。勝てたことがよかった」と笑った。

 シーズンを考えればゲレーロ、ビシエドの主軸の復調が必要。だが何より、白星という良薬を得たことが今は大きい。【柏原誠】