金本監督、左投手でも使ってください! 今季初めてスタメンを外れた阪神高山俊外野手(24)がプロ初の代打打点をマークする適時打を放った。2点ビハインドの8回、中日岩瀬から1点差に迫るタイムリー二塁打。相手先発が左腕大野のためベンチに下がった一戦で、苦手克服をアピールした。

 悔しさを力に変えた。2点を追う8回2死一、二塁。高山は代打のコールを受け、打席に立った。中日左腕岩瀬の2球目、外角スライダーを力強く振り抜く。打球は遊撃手の頭上を抜け、二塁走者を生還させた。1点差に迫る適時二塁打。背番号9は「見たか!」と言わんばかりに、パーンと手をたたいた。

 今季初のスタメン落ち。前日は左腕ジョーダンに3打数無安打で、対左打率は試合前まで12打数3安打の2割5分と落ち込んだ。この日の先発も左腕大野。先発を外されたのは必然的だった。それでも巡ってきた名誉挽回のチャンス。片岡打撃コーチは「これから左を打っていかないといけない選手だから」と、左腕岩瀬に対して代打の代打を送らなかった意図を説明した。意地の一打だった。

 高山にとって、下克上を続ける後輩が大きな刺激になっている。昨年のドラフト直後、普段はクールな男が、満面の笑みを浮かべた。「良かったです! いやー、もうぎりぎりでしたね」。明大の1学年後輩、佐野恵太のDeNAドラフト9位指名を受けてだった。大学では寮のトイレ掃除を一緒に行いながら、自らの打撃理論を教え込んだ。ルーキーイヤーの昨年には、東京遠征中に食事に誘い、プロの世界の厳しさも教えた、最もかわいがってきた後輩だ。「あいつ多分、結構やると思いますよ」。高山の言葉通り、後輩はセ・リーグ最下位指名の下馬評を覆し、開幕から1軍に定着している。先輩も負けるわけにはいかない。

 試合前練習では、ベンチ裏の練習場で1人特打を敢行。不調を脱するため一心不乱にバットを振った。試合後、高山はいい感じで打てたか? との問いに一言、「はい」とだけ言い残した。金本監督は先発落ちの若虎に対し「そういう(意地の)気持ちがないと、これから進歩はないと思う。悔しくないことはないと思うし、その悔しさをどうやっていい意味で持ったまま次に生かすか。それは結果を出すしかないんだから」と逆襲に期待する。試練を乗り越えながら、成長を続けている。【梶本長之】

 ▼高山は今季、左投手を相手に打率3割8厘(13打数4安打)と、対右投手2割7分8厘をしのぐ好成績。昨季は左に2割4分2厘(右には2割9分)と苦戦していた。